Auf:witchcraft | 2nd works

ユメクワレ

 王は一人だった。


 子どもの国と呼ばれるこの地へやってきた私たちは子どもを見なかった。子どもどころか住人を見かけることもなく、ふらふらと不法進入を繰り返すうち王室へ来たというわけだ。


「おうさまひとり?」

 王は項垂れている身を正すと驚いた。仰々しい衣装で分からなかったが、まだ二十になっていない顔だった。王まで子どもだったということだろうか。


「旅人さん、僕が王に見えますか」

「えらそうだよ」

 王はリィンの一言にやや引きつった顔で話をはじめた。

 僕の父は王でした。大人が働き、子どもはそれを見て育つ。子はいつか大人になり、親のように働く。そうやって大人が国を支えていました。

 父は民を幸せにすることを考え、不満を持つ者はいませんでした。隣国との関係も良くて争いもない豊かな国でした。

 ある時父は思いました。生まれた子どもは、生まれた瞬間から大人にするための、労働力の器でしかないんじゃないか。ただ夢を見てその足で歩く子どもが、この国では生きられないんじゃないか。夢を見れないんじゃないかと。


「それで君が王に?」

「……はい」


 父はまだ十にもなっていない僕を王座に座らせました。それからすぐに病で亡くなりました。大人に憧れ、子どもは死んでいくんだと言い残して。


 それから子どもの国と呼ばれるように、国全体で夢のあることをしました。

 ある時は月へ行こうと塔を建て、またある時は空飛ぶ乗り物を作ろうとしました。

 大人は夢あることに目を輝かせ、子どもと一緒になって夢を追いました。それはもう大人ではなく、子どもでした。


 それから少しして、夢が叶わないと嘆く者たちが少しずつ国を出て行きました。人が減り、夢は遠ざかりました。最後まで夢を見た子どもは心を病んで死に、今日の僕が一人で居るわけです。

「おにいさんには夢ないの?」

「……もうすぐ大人だから」


 それから私たちは王を隣国へ送った。それからは特に何でもない普通で豊かな人生を送ったはずだ。


夢を喰うのは人じゃない。

夢を喰うのは何だろうか。

それでも子どもはそれを見る。




Auf:witchcraft | 2016.10.15 - 14.12

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援した人

応援すると応援コメントも書けます