イホウニテ

 とっても昔の話なんだけどね。


 文明が崩壊する前は、電気の通るカラクリの中に仮想の世界を作って遊ぶ文化があった。

 誰もがカラクリを持ち、そして誰もがその仮想世界に依存していた。


 それはもっと昔、文字を用いた本という形よりも分かりやすかった。絵をみるよりももっと動きがあった。一つの曲よりも飽きなかった。映画よりも自分がそこにいることができた。そして現実とは違って、寂しくなかった。


 あるとき誰かが言い始めた。

 この世界の人は生きていると。ただの登場人物じゃないと。そこは本当にあるのだと。

 それは皆に批判された。


 よくある設定の世界。

 それはよく地球と俗称されていた。巨大な丸い球体の表面に海があり、山があり、人が住む。そしてその球体は無数に存在し、そのどれもがすべて違う球体という設定だ。

 私も子供の頃はそんな夢のような世界に憧れたものだ。


 私たちの住む世界とは全く異なっているが、だからこそそれに惹かれ、登場人物に命をも見出したのだろう。


「……だってー」

「へんなこと書いてあったなあ。旧文明ってすごいな」

「コルネットてきとういってる」

そうじゃない。ふと稀に思うのだ。

 生きているつもりの私は何かの登場人物で、作られた通りに動いているだけなんじゃないかと。ふと、思うだけのことさ。

「リィンはどう思う?」

「なにかね……」

「うん」

「忘れてる。忘れたことにされてるようなきがする」


けれど間違ってはいけない。

そんな世界、あるわけないんだよ。




Auf:influence | 2017.02.01 - 04.10

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます