ミヲクウタチキ

 夏、干ばつ地域を横断していた。水の匂いを追い歩き水脈筋をさがした。

 しばらくして遠くにみどりが見えた。二人の喉はもうカラカラだ。からっぽの水筒をぶら下げてみどりを目指し、なんとかたどりついた。干ばつの中、オアシスのような一帯に根ざすようにして小さな村があった。

 切れかかった水を求め村に入ると、どうやら不作のようだ。村の住人は「食べ物はないか?」といった顔持ちで寄ってくる。さらさらと人を払い、物々交換により水をもらうことができた。


 村の中心には大きな木が一本立っている。その木が村全体を翳らせているために一帯が乾くことがないという。

 その木には実がたくさん、取っても取っても減らないような数の実が実っている。それを食べればいいんじゃないかと聞いてみたが、村人はアレを食うと木に食われるのだと答えた。なんでも、食べれば最後、食った本人は生気が抜けて日が登っていないうちに木の根元へ近寄って、木と同化してしまうらしい。その実はこの一帯が不作に陥ると実り、それを誰か一人に食わせて生贄にすることで不作が解決されたという。それも、何度も。


 夜。借りた宿で夕食をとる。食事まで用意されたのだが、リィンが「このスープのまないほうがいいよ」と言う。何を意味するのかは察しの通りだ。私はスープを瓶いっぱいに詰め、夜を忍び、水脈に繋がっている井戸に投げ込んだ。

 その後、夕食のパンを二人で齧りながら村を後にしたのは言うまでもない。


 それからというもの、あのあたりは木々が生い茂り、川も流れるような土地になったという。


 もちろん、もう二度とあんな実がなることはないし、旅人が喰われたなんて噂が立つことも無くなった。




Auf:haptik | 2016.07.18 - 10.15

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