ヒビユクフユ

 立冬の頃に、大きな山脈の一角を歩いている。床はとうとう冷え込み、白い錆を積もらせようとしている。早いうちにちいさな洞でもみつけて春まで篭ろうという算段である。


 二人はみつけた洞に落ち枝をたくさん集め、買いあさった保存食と衣、寝具を確認した。この辺りの冬は短いと聞いている。一ヶ月も篭らずに、気付いたら春めくはずだ。

 いよいよ冬眠を始めた。することはない。暇だ。

 暇というものほど好きなことはない。特にこの二人だ。ゆっくり生きるだけで楽しい。

 何回か寝起きし、干し肉を齧っていたある日。雪がそこそこに降り積もっている日だった。子供が二人転がり込んできた。見るとまだ七か八といった坊とその姉といったところか。

 冷え切った子らを火に当て、食物を少しばかり分け与えた。ひどく冷えて疲れていた子らだったけれど一晩でずいぶん良くなった。

 姉の方に聞くと、家を出てきたのだそうだ。弟は母親が違うという理由で愛されなかったらしい。二人が一緒にいることが許されず、弟は一人その小さな体で暴力を受け止めていた。

 ある日、とうとう弟は眠り病をわずらってしまった。起きている弟に聞いても眠りたいと言うばかり。姉は決死の思いで弟を連れ、家を出たという。


 冬が明けたらこの洞を出て、近い村まで連れていこうかと伝えた。しかし二人は村へは行きたくないといった。

 二人はここで生きていきたいと言った。誰にも関わらず二人の力で。だから生きる術を教えてほしい、と。

 冬が明け、コルネットらは山道を歩く。

 子供二人はありがとう、と見送った。

 残された彼らは自分の腕で、足で生活を営み始めた。川の魚をとった。山の恵みを分けてもらい、質素に食事をとった。ぜいたくなことはせず、必要な分だけを食べ、ゆっくりと生活を始めた。

 でも、平穏が続くのは最初のうちだけだった。

 ある日から弟は眠りから覚めないようになった。


 少しして、山脈のふもとの村を巡っていたある日のこと。コルネットとリィンが、名のある医者のいる村を訪れた時に、ある噂をきいた。

 眠り病の男の子を売りに来た女児がいると。

「ぜったいに眠りから覚めない病をけんきゅうして欲しい。この子かいぼうしてもいいから、お金をください」と。

 その後、子供二人は実験の好きな医者にかいぼうされたという。


 今では、ちいさな病院の待合室にかざられている。

 二人の骸骨はおなじ飾り棚に、手を繋いで。




Auf:haptik | 2016.07.18 - 10.15

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