#52

その時、角から何者かが現れるのをみた。


『斎藤さんー、九十九記念病院で事件で・・』丸山は顔を上げて正面を見た瞬間、恐怖に怯えた。


斎藤は首にナイフを押し付けられた状態で呼びかけた『マル!』


『斎藤さん!・・どう言う状況ですか・・これ?』


『ちょうどいい、お前がクロウに伝えろ』ファントムは丸山に話しかけた。


『伝えろって・・?』


『この女を預かっているから、第8地区にある廃ビルまで来いと』


『ちょっと待って・・!クロウの居場所なんて知らないよ!』


『この女を助けたいなら死にものぐるいで探せ』


斎藤はファントムに気づかれないように小さく丸山に頷いた。


丸山はそれを確認すると『分かった』とだけ言った。




そして『絶対に手を出すなよ』と言うとその場から立ち去った。







9:44am




楓は自宅へ戻るとリビングに行った。


リビングには母である和歌がテレビを見ていた。


テレビでは九十九記念病院での立てこもり事件を伝えている。


『母さん、父さんと千佳は?』


『あら?楓、会社に行ったんじゃないの?』


『用事があって戻ってきた』


『何があったの?』


その時、2階から父、総一朗が降りてきた。


妹の千佳も洗面所からリビングへやってきた。


『あれ?お兄ちゃん、どうしたの?』


『会社で何かあったか?』と総一朗。


『みんな、今すぐここから離れてくれ』と楓は切り出した。


『どういうこと?楓』と和歌。


『あの事件のことか?、なら警察がなんとかしてくれるだろう』と総一朗は楓を諭した。


『頼む、詳しくは言えないが九十九から離れてくれ』


『ちゃんと説明してよ、なんか変だよ?お兄ちゃん』



『九十九が危険なんだ、詳しくは言えない』


『そんなんじゃ、納得しないわよ!私、今日予定あるのよ』千佳は楓に詰め寄る。


そんな中、総一朗が口を開いた。


『わかった、鳥飼インダストリーのT都オフィスに行く』


『あなた!』


『ちゃんと訳を言ってよ!お兄ちゃん』


『いいんだ、千佳』


『お父さん・・』


『楓、私たちは大丈夫だが、お前はどうするんだ』



『やらなければいけない事がある』



総一朗と楓は数秒見つめ合う。


『わかった、気をつけろよ』


『ああ』



楓は家族を総一朗に任せて家を後にした。



『あなた、楓に何があったの?』


総一朗は少し考えてつぶやいた。






『男には男しか分からない事がある、楓にはやるべき事があるんだろう』



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