#44

美木本は社内の社長室に篭っていた。


PC画面を見つめて考え込んでいる。


何者かによってPCが操作された痕跡を見つけたからだ。



美木本には大体の見当はついていた。


しかしその見当通りだと困る事も分かっていた。



『だから、あの時にちゃんと始末しておけば良かったんだ!』



美木本は机から立ち上がると前にあるテーブルからブランデーを取り出し注ぎだした。


美木本のいる社長室がある最上階フロアには黒いスーツを来た、屈強な男たちが5人いた。


美木本は間違いなく”クロウ”を警戒していた。









楓は美木本グループ本社の屋上にいた。



そう、美木本がいる社長室の真上である。



楓は前回と同じように屋上のドアをこじ開けると中へ入っていった。



階段を静かに降りると、屈強な男たちを確認した。


(まぁ、そうなるよな)


階段を降り切ると壁に背を合わせて廊下を伺った。


一番近い男が背中を向けた瞬間、楓は素早く動き出した。


重心を低くして足音を立てずに近づくと一瞬の内に男の口を塞いで仰向けに倒すと顔面を殴り、気絶させた。


しかし、楓の方に振り向いた男が存在に気づき声を上げる。


『クロウだ!!』



社長室に篭っている美木本は怯えたように辺りを見回す。


男たちが楓目掛けて襲いかかってくる。


男たちの攻撃を素早く交わしながら楓は一人、一人倒していく。


3人倒した楓は奥にいるあと2人を確認した。


素早く右手のグローブからワイヤーを飛ばすと男の体に巻き付き、行き寄せる。


引き寄せられた男は腰からナイフを取り出そうとしていた。


楓は素早く右腕で男の手首を叩くと男の腕からナイフが廊下に落ちた。


楓は男の後ろに回ると腕をクロスするようにして首を絞めた。


男は一瞬で気絶すると廊下に倒れ込んだ。



最後の1人となった男が一心不乱に飛びかかってくる。


楓はただ立ち尽くし、男の突進を見つめている。


男が楓の射程距離に入ると腰に装備してある棍棒(こんぼう)を取り出した。


棍棒を持っている腕を下へひと振りすると棍棒が伸びた。


そして一発、男の顔に叩き込んむ。


男の体は一回転して倒れ込んだ。



廊下には屈強な男5人が倒れ込んでいた。



楓、一人がそこに立ち尽くしていた。



見つめる先には美木本のいる社長室の扉があった。

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