captur#4

#14

 第5地区は工場地帯である。


 多くの企業の工場が立ち並びんでいる。

 その一角に何もない平地となった場所があった。いずれはどこかの企業が参入するであろう。

 楓は昨晩、"グレート・エスケープ”と名乗る猿渡と出会い、『第9地区を救いなさい』と告げられた。


 そしてこの空地へと来いと言い渡されて、現在にその場に立っている。


『なにもないじゃないか・・?』

 楓は空き地となった土地から見えるT湾を眺めていた。

『悪ふざけに巻き込まれたかな??』

 楓は引き返そうと歩きだした時、後方からなにやらガラガラという音が聞こえた。楓はその方向に振り向くと空地中央にあるマンホールが横にずれ一人の男が姿を現した。

『鳥飼楓さんですね』男は40代半ばといった風貌だった。

『は・・い』

『どうぞ』男は言葉少なめに話すと楓をマンホールの方へ行くように促した。

 楓は言われるがままそのマンホールの中へ入り梯子を下って行く。

 梯子を下って目にとまった光景に楓は息を飲んだ。

 そこはだだっ広いコンクリートの床にコンクリートの壁しかない殺風景な場所だったが、10数名の男達が何やら戦闘訓練の様な事を行っていた。

『な・・なんだ、ここは』

『これが“グレート・エスケープ”です』案内した男がボソリと話した。

 男はそのまま言葉少なで楓を奥へと案内していく。

(こんな所にあんな施設があったのか・・)楓は尚も不思議そうに辺りを見回した。


『ここは仮の場です』男は楓の心を読んでいたかの様に話し出した。

『“グレート・エスケープ”は一か所に留まりませんから』

 この地下空間には仕切りなどはなく、ましてや部屋などは存在していないが一か所だけ衝立のような物が建てられており、他との区切りが付けられていた。

『鳥飼楓が来ました』男は衝立越しに話しかけた。

『よく来てくれましたね』衝立から猿渡が杖を中央に両手が持ちながら現れた。

『まだ信じがたいですがね』

『よろしい、では早速始めましょう』猿渡がそう言うと案内した男が突然襲い掛かった。

『うわ!なんだ!』男が楓の顔に右ハイキックを繰り出そうとしている。

 楓は咄嗟に左腕で顔を庇うように防御した。

『さすが、武術をたしなんでいたと聞いていた事だけありますね』猿渡は笑みを浮かべながらつぶやいた。

 男は攻撃を止めることなく楓に襲いかかる。

『なんだよ!いきなり』楓は男の攻撃を巧みに交わしながら(騙されたのか??僕は)と心で思った。

『よろしい』猿渡が声をかけると男の攻撃は治まった。

『あなたには基礎が出来ている。あとは戦闘技術だけです、耐えれますか?』


『ナインゲート(第9地区)を救う為ならやります!』

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