#7
楓と妙見は最徳寺本堂にいた。
最徳寺は第9地区にあるお寺である。
九十九開発当初はまだそれほど腐敗の進んでいなかった第9地区に造られた最徳寺には毎年市内の人々が参拝に訪れることが多かった、鳥飼家も例外ではなかった。
楓はそれ以外にも子供のころにはよく最徳寺へ遊びに行っていたこともあった。
なので住職の妙見とも長い付き合いではある。
『昔と全然変わってませんね』
『お寺は変わることはありませんよ』
『テレビで一報を知った時は驚きましたが元気そうでなによりです』
『まだやらなければいけないことがあるので死んでられません』
『橋ですか』
『ええ、これから少しばかし騒がしくなりますがご了承下さい』
『地区が潤うのであれば大歓迎です』
『ここへの影響は極力ないように努めます』
『ここのことは気にせずに』
『そう言ってもらえると助かります』
『今日はお仕事で?』
『いえ、ちょっと第9地区を見ておこうと思って』
『一人では危険ですよ、ましてや大企業の社長さんともあれば』
『一応ボディガードの人間がついてます、それに学生時代に武術をたしなんでますので、いざという時はなんとか切りぬけますよ』
と冗談交じりに答えたが、楓はスーツの襟を正し改めて話し出した。
『最近、犯罪が増えていると聞きましたが・・本当ですか?』
『たしかに夜は騒がしくなったような気がしますね、まぁ夜は出歩かないのでなんとも言えませんが』
『さっきの2人もあまり見ない顔でしたね』
『どうやら新たなグループが住み着いたようです』
『犯罪組織』
『彼らは"SCAR(スカー)”と名乗っているようです』
『"SCAR(スカー)”?』
『さきほど暴れてた輩は組織の下っ端でしょう、彼らはおそらく"SCAR”の名前を振りかざして威張っているだけですよ』
『組織がどのように考えているか分りませんので橋の計画は慎重になったほうがいいですよ』
『悪には屈しません』楓は強く言い放った。
『子供のころから変わらず正義感の強いお人だ』
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