第25話 ぺったり男子とはなんぞや

 ぺったり男子。

 それは、ゴールデンウィークも終わった、そう、大体このぐらいの季節になるとそろそろ出現する生きもの。


 そう聞くだけでぴんと来るかたもおいでやとは思うんですが、まあ一応説明しますと、冬場はさらさら綺麗なお肌でなでなでたぷたぷ気持ちよく触れた体が、夏場はどうしてもウェットに。

 我が家の場合はニオイはさほどきつくなりませんが、手触りだけはいかんともしがたい。

 まあそういうことですわな。


 どうしても汗ばんでる体表を触るとぺったりする。

 さらさらと手が滑らない。

 つまらん。


 だから触らない。

 「触らない権利」を行使させてもらう。


「●さんが、●さんがボクを触ってくれない……」

 ダンナ、ふるふるしながら訴える。

「せやかて。ぺったりすんねんもん」


 そちらを見向きもせずに答える私。

 めっさ冷たい。

 多分、小説とか書いていると輪をかけて顕著。


 ……ダンナ、涙目になる。


 とまあ、我が家では毎年こんな過程を辿っておるわけですが。

 みなさんのお宅ではいかがでしょう。

 って、うちみたいなぽっちゃりが生息してなければ、そない言われたってどがいもこがいもあらへんですわな。


 ちなみに「こがい」は「このように」「斯様かように」という意味の方言のようです。関西圏よりもうちょっと西かいな。

 「あのように」が「あがい」、「そのように」は「そがい」。

 従って当然、「どのように」は「どがい」。

 だから例えば「まあそない言わんと」やったら「まあそがい言わんと」とかになる、はず……って何の話や。

 まーたすぐに脱線する!

 誰か止めてくれなあかんやん。(もはや読者さん頼みか!)


 えーと、なんやったっけ……そうそう、「ぺったり」。

 ほんで今回は、それつながりでちょっと水に関係するトラブルのお話を。


 最近仕事はじめた〜いうんは言いましたが、そこで使わせてもろとる自分用のノートパソコンに、先日水をかけてしまいました。

 あわわわ。大変。

 同僚のみなさんは優しいので雑巾やらティッシュやら持ってきて一緒に拭いたりしてくださいましたが、いやもう青なりましたわ、久しぶりに。

 お優しくて穏やかな上司にあたる方も、「困りましたねえ」と言いながら「でもこれ、ほんとに壊すと弁償になりますから」としっかり釘さされてもたし。

 あうあうあう。


 とりあえずキーボードに入り込んだ水を拭いたり抜いたり、一日逆さにして乾かしてみたりしたのですが、翌日の朝になって恐る恐る電源いれたら、「U」「I」「O」「P」この4つのキーだけが反応しない。ちょうど横一列のここだけ。なんでやろ。

 外付けのキーボードとか使ってもええのんやったらそのぐらいは自腹でもええけども〜。でもいずれは修理なりなんなりせなあかんのやろなあ。


「十何万とかしますのでね」


 と気の毒そうに言われてさらにへばる。

 そんな高いの? コレ。

 一ヶ月ぐらいただ働きかいな。

 うあ〜最悪。

 水キライ。

 いや、水泳は得意やけども。

 まあそんなこんなで、なんとか弁償でなくて修理でどうにかならんかなあと妄想(?)しているヨメです。


 んで、帰ってそのような状況を報告したところ、くだんの「ぽっちゃり」改め「ぺったり」男子はどう言うたかと言えば。


「ま、しゃあないな。ジブンが悪いんやし」


 って、めっちゃ冷たいし!

 いやわかってますがな。

 自分の不注意であることも何もかも、理解はしてますって。アホやあるまいし。

 しかしそれ、何回も言わんでも。


 むかついたので、のしーっとその足の甲を体重かけて踏みつけてにじにじしてやりました。

 だまーって睨みつけたまま、にじーっと。


「……なにすんのよう!」

「わかってんねん。そんっな事は重々わかっとんねん。わかってるけど、なんべんも言われると腹立つゥ!」


 ぐりぐりぐり。

 たぶん後半、台詞が巻き舌になっております。


「痛い、痛い、イタタタタ」


 おなかをもみもみする代わり、足の甲だけでもぐりぐりしてあげたんやから有難いと思ってもらわんと。ねえ?


 鬼や。

 ここに鬼がおるで。


 でも今朝は、子どもが学校行事のため弁当もちだったので、例によってダンナがイソイソと朝から早起きして作ってくれ、ついでに私の分まで作ってくれていたのでした。

 ええ、可愛いタコさんウインナーまで入れてね!

 ほんま、どんなマメやねん。


 うーん。そう考えるとひどいヨメやわあ。

 せやから自分で言うな。


 そういえば先日の卒業式の日、うちの学校では式の前に子どもらが書いた親宛の手紙っちゅうのんを渡されたんですが。

 先生らが「後で開くタイミングをお知らせしますので、それまでそのままでお持ちください」と言うので「ははん」と思いつつ席に座りました。

 これはアレや。

 ここぞというタイミングで子どもから親へのメッセージを読んでもらって、親の涙腺決壊させようっちゅう趣向やなと。

 ま、悪くはないんやけどね。

 先生方が一生懸命なさってること、悪くは言いませんけども。


 どうもアレです、先生方が親を「泣かそう、泣かそう」と頑張れば頑張るほど、こっちはどんどん冷めません? みなさんはそんなことないの?

 あの明らかに「大人に言わされてる」感満載の台詞の羅列とか、ほんまに感動するんかいな。

 まあ、ほかのお母さん方はもう、それ以前にいくつも準備されてた「決壊ポイント」で次々と轟沈させられてはったんですけどもね。

 あ、描写が艦隊のゲーム調ですみません(笑)。

 単に我が家が素直やないだけなんかいなあ。


 ま、とにかく。

 ほんで遂にその手紙を開くタイミングが来たわけですが。

 なんて書いてたと思います?


 私のほうとダンナのほうと別々にあったんですが、ダンナのほうの文面。


「お父さん、いつもおいしいご飯を作ってくれてありがとう! あれも、これも、とーってもおいしかったよ! これからも作ってね!」


 いやあ、正直やわああ。

 すがすがしいぐらいの正直さ。

 普通やったらお母さんに書く文面やけども、まあ嘘やないしね。

 こっちのほうがよっぽど琴線に触れましたね。


 で、私あてのほう。


「中学になったらちゃんと勉強教えてね!(とくに数学) でないと終わる! ゼッタイ終わる! 人生が終了する……!」


 って、どんだけ必死や。

 別にそんなんで終了せえへんし。


 え、私たちですか?

 そらもう、泣くどころの騒ぎやない。


 むしろキョーレツな笑いのツボに入ってもうて、腹筋いたかったわ。


 と、今回はそんなお話でした。

 また気が向いたら書きますね。

 みなさん、「ぺったり」とは無縁の素敵な夏をお過ごしください!

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