第300話 思えばいと疾し08
「魔弾の射手」
「なるほどね」
音々と花々は、苦笑した。
明太子おにぎりを食べながら、
「いやえへへ」
謙遜ともとれる……何処かはにかんで照れくさそうな乙女…………アーシュラだった。
「…………」
一義は、鮭おにぎりを食べている。
海苔の香りも鮮烈だ。
ついでお茶を飲む。
「先生方は団子茶屋で働いているんですよね?」
「です」
「だよ」
「だね」
「声かからないんですか?」
一義がアーシュラに言った事を、アーシュラが一義たちに問うた。
「面倒」
「嫌悪」
「無精」
「無銭」
一蹴された。
「花々先生なんか戦略レベルですよね?」
「否定はしないよ」
「警邏隊とか」
「しがらみは好きじゃなくてね」
梅おにぎりを、もむもむ。
「ま、旦那様が入隊するなら付いていくけど」
「別に名を上げてどうのでも無いしね」
食後の茶を飲んで、ホッと一息。
「それじゃ」
何時もの流れ。
「温泉に入りましょ」
「え、僕も?」
「いや、アーシュラはさすがに」
「他の先生方は?」
「水着を条件に混浴しております」
「僕も!」
「水着厳守だよ?」
「抱いてくれて良いんですよ?」
「見聞を広めなさい」
そんなわけで、一義たちは、アーシュラと一緒に温泉に浸かった。
「良い湯ですね~」
アーシュラは、気持ちよさそうだ。
「大会まで練習しなくて良いの?」
特に意義ある疑問でも無いが、
「イメージトレーニング中です」
一応サボってもいないらしい。
「魔弾の射手が負ける道理も無いけどね」
「ですね~」
プカプカ。
「外見年齢的に先生はおじんですか?」
「おじんです」
「エルフ……」
「アーシュラと子を為せばハーフエルフが出来るね」
「良いですね!」
「良くないよ」
カクン、と、首が脱力。
「…………」
花々が黙ってアイアンクロー。
「いたた。ギブギブ」
「旦那様はあたしが最初だよ」
「わたくしなんですけど……」
「音々は?」
「モテモテですね」
「色々ありまして」
一義は肩をすくめるのみだ。
「団子茶屋は勿体ない気がするんですけど……」
「何が幸せかは人それぞれだから」
一応自立していると取れない事も無い。
そも膨大なキャパが無ければ行使能わずだ。
姫々にしろ。
音々にしろ。
花々にしろ。
「乙女のうちに先生に抱かれたいんですけど」
エルフと人では、時間の流れが違う。
「和の国を巡って恋を探しなさい」
上から目線で言っている一義だが、
「ヘタレの最上級」
なので、
「お前が言うな」
に相当する。
「はふ」
チャプン。
湯面に波が出来る。
「魔弾の射手なら王家からも勧誘が来そうですね」
姫々が、クスッと笑う。
「やだなぁ」
その在り方は、蒼穹吹きすさぶ風のようだ。
「水の面に……あや吹き乱る……春風や……池の氷を……今日はとくらむ……かなぁ?」
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