第101話 エレナという王女07
何やら一義は非常に霧の国の女王ディアナに好かれているらしかった。
そもそもにして一義のハーレムに所属していると自称するくらいである。
「ご主人様……」
「お兄ちゃん!」
「旦那様?」
「一義」
「一義!」
「一義……」
「…………!」
銀色と黒色と赤色と金色と青色と燈色と桃色の美少女に詰め寄られたくらいだ。
「知らないよ僕は」
と無責任なことを言った覚えが一義にはある。
そしてそんな騒乱何ほどのものとディアナは一義に腕に抱きつき私室に案内した。
「…………」
無言の使用人が言葉を発さずに扉を開け悠々と一義たちは女王の私室へと入る。
待っていたのは、
「いーちーぎっ!」
燈色の髪に燈色の瞳を持った一義の周りには珍しい年上の美女だ。
アイオン。
一義のハーレムの一人。
同じくハーレムのジンジャーの実の姉。
宮廷魔術師。
そして《雷帝》の二つ名を持つ戦術級の戦力機能。
本来なら恐れおののくべき相手だが一義はさっぱり気にせず、ディアナの部屋から飛び出してきたアイオンの飛びつきをさらっと躱した。
「むぎゅ!」
「おふぅ!」
慣性の法則に従ってアイオンは音々を巻き込んでゴロゴロと城の通路に転がった。
「何で避けるのよぅ!」
「むしろ何で飛びつくんでしょう?」
「一義が可愛いから!」
「侮辱してるんですね? そうなんですね?」
「可愛い一義……わたくしの近衛騎士になる決心はつきました?」
「あー……そんな話もありましたねぇ」
けんもほろろ。
「ともあれ立ち上がってくださいな。音々が窒息してしまいます」
そんな一義の指摘に、
「おや?」
とアイオンは音々を見る。
アイオンの服ごしにもわかる豊かな胸が音々の呼吸器官を塞いでいた。
「これは失敬」
そう言って立ち上がるアイオン。
「何でお兄ちゃんが避けた女の子は音々にぶつかってくるのさ!」
当然と言えば当然の怒りに、
「そういうキャラなんじゃない?」
一義は一言で切って捨てた。
「……むぅ」
呻く音々。
「さて、では入りましょう一義様」
そう言って一義の腕を引っ張って室内に入るディアナ。
続いてハーレムたちがぞろぞろとディアナの私室に入っていく。
ちゃんと人数分椅子を用意してあるあたり徹底している。
一義と姫々と音々と花々とアイリーンとディアナとアイオンと……それから桜色の美少女の分の席が用意されていた。
桜色の美少女は髪も瞳も桜色で、白いドレスを着ていた。
清廉な印象のある少女だ。
奥ゆかしさ……と一義の出身である和の国では言う。
「王族かな?」
と心の中で呟く一義。
そして全員が席に着いて……ディアナはチリンチリンとテーブルベルを鳴らす。
先ほどディアナの扉を開いた使用人が無言で現れた。
褐色の髪にはメイドカチューシャを装備して、全身をメイド服で包み、褐色の瞳にてディアナを見つめ命令を待つ。
「…………」
始終無言である。
「キザイア」
とディアナは褐色の少女をキザイアと呼んだ。
キザイアは、
「…………」
ディアナに呼ばれても言葉を返さない。
不敬じゃないのかなと不思議に思う一義。
とまれ、
「全員分の茶を用意なさい」
そんなディアナの言葉に、
「…………」
やはり無言でキザイアは慇懃に一礼した。
そして室外へと出ていく。
「ハーモニーみたいな人ですね……」
これは姫々。
「全く答えを返さなかったけどディアナはそれでいいの!?」
これは音々。
「器が大きいねぇ」
これは花々。
「ああ、そういえば前回いらした時には紹介していませんでしたね。彼女の名はキザイア。私の侍女です」
「はあ……」
「へえ」
「ほう」
かしまし娘は納得する。
「ちょっとした心的外傷で失語症になっていますけど能力に問題はありません。こちらの意図を一だけ聞いて十返す人間ですゆえ」
「侍女……ねぇ」
キザイアの人形のような愛らしさに想いを馳せながら一義は言う。
「……ディアナ」
と今度口を開いたのは桜色の美少女。
白いドレスを着た美少女だ。
「ああ、そうだったそうだった」
ディアナは、
「忘れていた」
といった仕草をして見せる。
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