第120.B話「死の国へ7」

☆ ☆ ☆

「では、行ってくるのです!」

 馬車の窓から手を振るマイルズ殿、姉君のミリアムが笑顔で持ち上げているのが見えます。


「ご無事をお祈りいたしております」

 笑顔で頭を下げると馬車が出発します。

 馬車が進み始めたので頭を上げて後続の馬車を見ると、そちらからはティリスが手を振っています。思わず幸せな気持ちになり私も手を振り返します。


「結局残られたのはヴァンリアンス様だけですか……」

 私と一緒に見送りに参加したダーェット辺境伯と辺境貴族たちが、笑顔を張り付けたまま零します。失礼ですね。そこは私に聞こえないように言うのがマナーではないでしょうか?


「私では不服ですか?」

 笑顔で辺境伯を筆頭に貴族たちを見ます。

 一部顔を青くする者がいますが、大部分は私を嘲笑っております。

 まぁ、マイルズ殿を嵌めるためとはいえ、あのような無様な無能をさらしてしまったのです……。仕方ないですか。


「ヴァンリアンス様、部下の無礼大変申し訳ございません。でっ、ですので何卒お慈悲を……」

 嘲笑っていた貴族たちが動揺しています。

 魔王国の庇護下に置かれたとはいえ、未だ乱世を一国の主として自覚を持ち争っておられた方々です。ダーエット辺境伯がもつ軍事力と政治力、更には個の力を認めているから辺境伯に首を垂れていたのです。その辺境伯が私に怯えている。その事態に動揺もするでしょう。

 ……これもまた失礼ですね。


「ネルズ士族、バーヘレイ子爵、フルモータル部族長……」

 私が続々と嘲笑った貴族たちの名前を挙げると、全員背筋を伸ばし青い顔をしている。


「領地でのお遊びもほどほどに……魔王陛下の諜報機関が把握していないと思わないこと……だ」

 結びの言葉で力を開放する。

 外交、交渉ごとの基本は軍事力である。

 バランスや人間関係、損得勘定もあるが、すべての背後にあるのは軍事力である。

 私は昔から、人間であった頃から外交に従事していた。

 故に締めるときは締める。特に個の力を神聖視する。

 特に【人類滅亡の危機に中心的な活躍をした魔族たち】はその傾向が強い。


「……無礼、お許しを」

「威光我が言葉は陛下の言葉と心得よ……次はない……」

 遠目にもわかるほど震え、水たまりができるのではないかと思える程に冷や汗を流す貴族たち。私に名を挙げられた貴族以外も震えて頭を下げている。

 ……よくわかっているではありませんか。

 貴方たちの不正も私は、いえ魔王陛下直属の諜報機関は把握している。

 どうやらこの辺境円滑に統治できそうですね。


「ヴァンリアンス様、私も貴方様の力を見誤っておりました……」

「辺境伯。その話は後ほど……」

 この辺境の首領がそれでどうしますか、自分も頭を下げ器を示したつもりなのでしょうか。

 それはこの辺境統治をすべて私へ丸投げしたことです。

 ディールケ王国復興を成した後、混乱の東部諸国をまとめるのは、辺境伯貴方なのですがね……。これは後ほどゆっくりお説教が必要ですね。


「皆。私はダーエット辺境伯のもと、魔王国貴族としての結束を求めます。魔王国東部の底力を私に見せてください……。さぁ、一旦戻りましょう。我々の戦(いくさ)を始める時です」

「「「「「「おお!」」」」」」」

 さてさて、困った者たちをどう収めるのか……。

 これも魔王候補としての責務なのですかね……。

 

 

カクヨム+α

 こんにちはみんなのアイドル魔王陛下です。(テヘ♪)


マイルズ「電磁投射砲(レールガン)」


 うっわ! あぶな!!


マイルズ「てへ♪ってあなた幾つですか?恥を知りなさい」


 だって、妃が「貴方可愛い♪」っていうんだもん♪


マイルズ「お妃様が……(嘘だ、隙を見せたら血の一滴まで絞りつくす鬼王妃2トップの一角の方が……)」


 マイルズ。その心の声、聞かなかったことにしよう。


マイルズ「それより、辺境で私を嵌めましたね?」


 ん?なんのことおおおおおおお、やめて! 妃に手紙を書かないで! 悪い予感しかしない!!


マイルズ「キリキリ答えてください。私の時間は有限なのですよ」


 ため息交じりに言わないで。怖いから。大国の王である魔王陛下も恐怖だから!


マイルズ「いらっ」


 イラつきを声に出した!!!!


マイルズ「喋るか魔王妃様に冷たい視線をおくられるか選ぶのです……」


 すみません。箇条書き風に報告します。


・辺境が群雄割拠、面従腹背の状態で武力以外取り柄のない辺境伯が上に立ってしまった

・そもそも先代の辺境伯はバランス感覚優れる魔族だったが、同じことに飽きたのか爵位を息子に【ぽい】してしまい混乱していた。しかも本人は大魔王親衛隊という辺境伯よりも権威のある職に就いてしまい文句が言えない。

・辺境貴族たちは(ぼんくら)辺境伯の目を盗み軍隊を持っていた(これは警察力以外の軍事力を持つ場合の手続きをすっ飛ばしているため不正)

・軍事力を背景に不正(ちょろまかし)が横行し部族間対立が起こる間際であった

・丁度よく中央の権力を辺境に派兵できる機会(マイルズの護衛)があったので送ってみた!

・さらにちょうどいい感じでディールケ王国の王が居たので回収させた

・辺境軍事力は魔王の号令の下、ディールケ王国の安定させるための軍事力となるように逃げ道を用意し完全管理下に置きたかった

・ヴァンリアンスにはお人よしのふりをさせて色々回収させていた

・本当の護衛はティリスのみ

・これから東部安定のために頑張る所存

・てか、大魔王陛下。モンスター退治も大事ですが、おひざ元の国家安定もお願いしたい。といったら、「魔王、すべてはお主に任せた(めんどい、いやっ!)」と帰ってきた。おのれじじい!


 という事で大変申し訳ございませんでした!!!(土下座)


マイルズ「という事で、お聞きになられましたか?魔王妃様とリィおねーちゃん」

魔王妃「はぁ……」

アリリィ「へぇ……」


 おのれ! 幼児謀ったなぁ!!!!!


マイルズ「これで【おあいこ】なのです(てへ♪」


 くっそ似合うではないか! 食の聖女!!


マイルズ「リィおねーちゃん。魔王妃様~。この鉱石面白い効果があってですね~」


 やめて~~~~~。心労が!!!!!!!!!!!!!!!!


(おしまい)


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