5章:レベル神 神宮寺、ちょっと校舎裏まで

第82話「久しぶりに会ったら神さまでした。てへ」

「まーちゃん、再臨!」

 ノリです。言ってみました。


『オオオォォォ――――――!』

 地響きのような歓声が響きます。いや響かないで。マイク渡されて照れ隠しで言ってみただけなのです。


【まーちゃん共和国! 万歳! まーちゃん様、ようこそ!!】

 広場に掲げられるそんな横断幕を見ながら私は思わず苦笑いなのでした。


『きゃー! かわいいー』

 さんきゅー! なのです。もっと黄色い声援は歓迎なのです!


『『『『『おおー! かわいいー』』』』』

 ……私への声援は男性5、女性1のようです。

 断固として改善を要望いたします!

 その後、無難にスピーチを終わらせて私はみんなの待つ場所へもど………してはもらえませんでした。

 議長が私を抱えあげ、タウさんと間で手を振るようにと……。

 その後もずっと主役ポジションに置かれました。

 いえ、あのね。国名を許可してあげたのでそこにあるお菓子を食べに………え、そんな時間はない?

 ほっほう。逃げ………マモルンなんで変身してるのですか?

 何ですか何が気に入らないというのですか?

 ちゃんとスカートの丈を膝上まで降ろしたではありませんか?


「でも背中と腰から生えてるこれはなんだ……」

「? エターナルモードです! スーパーモードはいまいちでした……マモルンの足がもう少し長ければ……」

 マモルン監視の下、強制参加が続きました。納得ができません。


「マイルズ殿は乙女心をわかって居られないようですね」

「タウさん、3歳の私に何を理解しろと?」

「その前に俺は男です」

 笑顔を崩さない私とタウさんとマモルンの会話。


『L・O・V・E マモルーーーン!!』

 マモルンファンクラブ会員達の声にマモルンは膝をつきそうになりますが何とか耐えたようです。

 本日はまーちゃん共和国の建国の日。

 そして、議長を始め新たな大主教(教主はこちらの世界で教えを始めたことから教主と名乗っていたそうです)による教会として神への再生の誓いの日。そのセレモニーです。

 驚いたことにこの国、あれだけの事があったにもかかわらず国民の殆どが改宗しませんでした。

 神罰で神の姿を見たた為『盲信的に教えに殉じたことで神を冒涜した』と反省し、殆どの人が『あの悲壮感を纏った神をお救いしたい』と宗教の内容を正しく変更する方向で動いてしまったのです。

 中身を見るとずいぶんとスッキリしました。

 戒律だ何だとこまごまと設定していましたが、スッキリです。

 お話に意味を求めない様に聖書の初めに但し書きを入れるなど……元の世界の人が見たら卒倒しそうなことをしてたりします。

 何気に教会に私が反乱を煽るときに使った言葉とか、掲げられてたりするんですが……。

 ねぇ大主教様おろさない?

 その言葉?

 私の黒歴史を教本とかに載せるの……。

 ほう、このままだと聖書と同じ扱いの文書として残りますよ? ですと?

 ……そうならない為に先手を打ちましょう!

 ……先手。ナニカ嫌な予感がします。


「マイルズ殿はこの後どうされるのですか?」

 晩餐会でタウさんに問われました。

 議員や主教さんたちのあいさつで疲れ果てた時でした。


「うーん。この国を回ってみようかと思っています」

 そういうとタウさんがお腹を押さえて「うう、警護計画を練り直さないと……」とか呟いています。

 確かに、今回の件で魔王国の上層部の皆さんトラウマ級のストレスを負ったとか聞いてます。

 禿た人もいるとか……、後ほど毛生え薬をおくっておきましょう。


「元醜女衆の皆さんが気になりますからね……」

「ご立派なお考えです」

「あと、このまま獣王国にもどると結婚式あげられそうで……」

「……」

 タウさん。そこ何とか言って!

 戻り辛いよ……今回の件で一番暴れたのが獣王様一家とか……。

 獣王国では王宮がすっかり自宅でした。

 王妃様をうっかり「おかーさん」とお呼びしかけて焦った記憶があります。

 そう言えば「惜しい。既成事実………」とか聞こえたような気がしましたが……あれ?  獣人って種の残し方『転生』じゃなかったけ? あれ?


「そう言えば、マリブさんがご活躍との事で」

 私の言葉にタウさんは撃沈。

 副官のイケメンが介助しております。飲み過ぎでしょうか?


「ははは、まーちゃん様。あまり総監をいじめないでくださいな」

 愉快そうに笑うのは北方軍司令官のザザさん。

 お若いお嬢様の様で現場上がりの剛毅な方です。

 そしてなんとこの若さでレベル43らしいのです。

 それを聞いた時「レベルって?」と質問。

 そう、一般的に幼児へはレベルシステムについては秘密な様で、皆さんすっかりお忘れでした。

 レベルシステム、詰まる所の話『魔法力循環世界を夢見た神様達だったが、魔物や魔法力溜まりなどの不具合を現地知的生命体に対処させるため適性に合わせて強化する』為のシステム。

 もっと簡単に言うと「人間改造してモンスター狩り」。

 魔物を退治して行くと世界や魔法力との親和性が増してさらに強化、つまりレベルアップ可能になる。


 『改造手術の先駆者は神様だった!!!!』という衝撃の事実でした。

 この国では最近神殿の復活がなされはじめたので、レベルアップ祭り中です。

 生きて行けばモンスターと遭遇するのが必須のこの世界です。

 しかも治安は最低限、自分達での対処をさせられていたこの国では必然的にレベルアップする人が多く喜んでいる様です。が、それは家族など近しい人達の犠牲の上の成果なので今一どう喜んで良いのか複雑な心境の喜びだったそうです。

 さて、そんなものの存在を知った私と勝さん1号はスキップでグルンドにあるレベル神殿に向かおうとし……たところ、祖母につかまり現在に至ります。


「おや? まーちゃん様もレベルアップにご興味が?」

 余りにレベル神殿の方ばかり見ていたのでバレてしまいました。


「はい。神様の改造手術! 興味があります」

「……何か不穏当な言葉が聞こえましたが聞かなかったことにします」

 上品な笑顔のザザさん。

 下士官から『鬼騎士団長』と囁かれている人とは到底思えません。

 思わず男性を紹介してあげたいのですが、私の周りはロリコン・ショタコン・熟女好きしかいません。

 後は……苦労性のイケメン事、イーリ兄か俺様っぽい第一王子しか……。


「何ですか? その期待に満ちた眼差しは?」

「いえ、何やらまーちゃん様から良い男をご紹介頂ける様な気がしましたので」

 野生の勘? なのでしょうか?


「私が紹介出来るのはたかが知れていますよ?」

「それでもです」

 あー、これは革命時の戦功で『北の女傑』と呼ばれる方の目です。

 肉食系なのです。


「うーん、おばあちゃん。イーリ兄を売ろうと思いますが良いですよね?」

「直球ね、マイルズ。でもあの子にとっては良い縁談ね。一度会って頂こうかしら」

 鶴の一言頂戴しました!

 という事で翌日会わせて見たところ、一目惚れしたイーリ兄が即日プロポーズするに至りました。

 顔を真っ赤にして愛を迫る15歳と、爪先から頭のてっぺんまで朱に染まり挙動不審になる22歳。

 どちらも美男美女で大変絵になる光景に、関係者一同ニヤニヤが止まりませんでした。

 もちろん国としても理がある縁談です。

 賢者と英雄の孫と、今後共和国軍務に関する中心人物の縁談。

 しかも、イーリ兄の能力はすでに短期でのグルンド実習で評価を得ており、この文官不足の国にとって喉から手が出るほど欲しい人材。

 何よりイーリ兄の場合は、《魔導の家系で魔法の才能が無く》王国にいても変に疎んじられるのが目に見えていましたからね………。

 終始お祝いムードでいたその日の夜、勝さん1号から緊急の通信が入りました。


『レベル神、神宮寺だった!』

 ………はぁ?


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