後編

第四章

第63話 きたきつね

「オオカミさん! いらしてたのですね」

「久しぶりね、ユキヒツジ。それに……」


 ユキヒツジの発したその称呼しょうこに、二人のフレンズはすぐさま反応を見せて近付いた。


「アライさんにショウジョウトキも!!」

「オオカミ、また会えて嬉しいのだ」

「まぁ、ショウジョウトキの活躍がありましたからね(ドヤァ)」

「そうかも……、ふふっ。何より、こうして無事、再会出来たことに感謝しなければね」


 三人は自慢げな表情で笑い合い、お互いの無事を確認出来た事に安堵していた。同じ表情を浮かべる彼女等。そこには、共に虎口ここうを脱した深き友情と強い仲間意識から生まれるものが含まれていたのである。


「アライさーん、駄目じゃないかー。あれはルール違反だよー」


 先行していたオオカミから遅れてフェネック、リカオン、アミメキリンも合流してくる。


「フェネック!! あれは、その……、しょうがないのだ。ヨーロッパビーバーのアイデアが良かったから、つい……」

「その時点で“負けた”と言ってる様なものさー」


 そこへと、当の相手も会話に加わる。


「別に、アイデア自体は盗んでもらっても構わないと思ってたよー。けど、次の番であるアライさんがやるとは思わなかったよ~」

「あー、それはねー、あの場に居た誰もが思ったことなんじゃないかなー」

「その行動力だけは、流石と言うべきなんじゃない?」

「えっへん!」


 決して率直に称賛されている訳ではない。それも知らずに、アライさんは堂々と胸を張る。


「意外性だけがアライさんの取り柄だからねー」

「えええ~~!!」


 フェネックが冗談半分でそう言うと、アライさんは金切り声で不服そうに反応した。そんな様子にその場の一同もくすくすと小さく笑い、団欒だんらんとする。


 アライさん、フェネック、オオカミ、ショウジョウトキ、ヨーロッパビーバー、リカオン、ロスっち、アミメキリン、コモモ、ユキヒツジ。親交のあるフレンズがこれ程多く立ち混じる様子は、普段のジャパリパークで考えると、とても珍しい光景であった。これもひとえに、催しがもたらしたものと言えるだろう。


 そして、そこへ先程の約束を果たしに一人のフレンズが加わろうと接近してくる。


「きたよ」


 現れたのは、ネコ目イヌ科キツネ属のキタキツネであった。

 

 キタキツネはアカギツネの亜種であり、その多くは北半球に分布している。体色は薄い茶褐色から黄褐色、これ等をキツネの体毛の色を差し、色名に“きつね色”と呼ばれるものが存在する。耳の裏と四肢の足首部分が黒く、腹部と尻尾の先が白い。ふわふわとした毛並の尻尾を持つが、特にキタキツネはエキノコックスと言う寄生虫を持っている為、野生のキタキツネに触るのは極めて危険と認知されている。


 それでも、雪と戯れる姿は実に愛嬌があり、容姿もとても可愛らしいものである。食性は肉食性で、雪原に棲息するキタキツネは、狩りの際に高くジャンプして頭から雪に突っ込み獲物を捕らえる習性を持つ。


 内気な性格をしているが、多くの事に興味を持ち、フレンズ達との交流を心掛けている。趣味はゲームで、ゲームをしている際は夢中になり、周りが見えなくなってしまう。


 外見は袖に黒のファーが付いたオレンジ色の上着に、白色のミニスカート、自身の髪と同色の黄色いネクタイを締め、大きな白の蝶ネクタイを首に巻く。色合いは全体的にキタキツネの配色を再現しており、尖った耳やふわふわとした尻尾も受け継がれている。虹彩はキツネ色で、ツリ目である。


「ま、待っていたのだ!!」


 キタキツネがその場に混じると、同じゆきやまちほーにゆかりのあるフレンズ二人が声を掛けた。


「キタキツネさん、お久しぶりですね」

「キタキツネ!? 君だったのね……」


 ユキヒツジとオオカミが順に発すると、たどたどしい様子でそれに答えた。


「……うん。……、久しぶり……」


 あの時、オオカミ達は遠方からコンテストを楽しんでいた。

 その為、前列に固まるフレンズ達に視界を遮られ、アライさんがやり取りをしていた相手を見取る事が出来ずにいた。その相手が又しても顔見知りであるとは、オオカミは思いもしていなかった様で、今の面持ちがそれを語っている。


「驚いたわ……。やっぱり、ジャパリパークって……」

「狭い……、ですか?」


 リカオンが続く言葉を先に発した。


「そ、そうね……」

「それよりも、キタキツネ。あの光りのことを聞かせてほしいのだ!!」


 アライさんは、すぐにその本題に入ろうと急かす。

 しかし、それ以上に現状で優先しなければならない事が、辺り全体から感じ取れた。


「アライさーん、それよりも先に周りを見てよー」


 フェネックの言葉に素直に従い辺りも見渡す。アライさんは、その事にはっと気付いて、オオカミの方に視線を向けた。


「ぬぬぬ……」

「そうね。まずは宿って所かしらね。この近くにロッジがあるから、案内するわ」


 こうして、オオカミの先導を受けながら、暗闇の中を突き進み、全員はロッジへと向かう。

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