第51話 ふぇすてぃばる 2
ステージ表側。
眼鏡のレンズを拭き、一人のフレンズがステージに上がると、騒がしかった会場が一気に静まり返る。フレンズはぎゅっとマイクを握りしめ、祭りの始まりを宣言する。
「皆さん、こんばんは!! “けものフェスティバル”へようこそ!! 私は、今回の催しの司会進行の大役を任されましたマーゲイです!! どうぞよろしくお願いします!!」
ネコ目ネコ科オセロット属のマーゲイ。
ネコ科の中でも際立ち木登りが得意で、樹上生活を主とする夜行性動物である。生活に加え狩りも樹上行う程、木登りが上手く、その生態、能力から“ツリーオセロット”と呼称されている。
因みに、マーゲイは音声学習が出来る非常に珍しい動物の一種である。
体毛は黄褐色や灰褐色で腹部は色が薄い。腹部と耳以外に独特の斑模様を持ち、特に長い尻尾には多くの模様が表れている。頭部が小さく、大きく綺麗な暗褐色の目を持つ。
普段は強気でツンツンした性格をしているが、文句を言いながらも、やる時はやる、付き合いの良いフレンズである。最近は色んな事に興味を示しているとか。可愛い女の子が好きで、よく変に勘違いをされる事も多いという。
外見は白のノースリーブシャツに、マーゲイの模様を模した蝶ネクタイ、スカート、ニーソックス、アームカバー。そして、黒縁眼鏡である。長い尻尾も健在で、髪型は薄めの金髪ショートヘアである。
『マーゲイ!! いいぞ~!!』
集まったフレンズ達がノリノリでマーゲイを歓迎する。
「皆さんも一度は思ったはず……。このジャパリパークの盛り上がりは今、衰退し続けている……。だから、今回!! 私達は英断に踏み切ったのよ!! 誰かがやってくれるのを待っていても、いつまで経っても始まらない。なら、私達が、自ら始めればいいと!!」
マーゲイの瞳の奥には、その情熱の小さな炎が宿っていた。
『おおー!!』
『やっちゃうですよー!!!!』
『マーゲイ!!!!』
会場からフレンズ達の声が飛び交う。
「これは、私達運営だけではなく、皆さんと創るお祭りなんです。誰にも何にも邪魔されない私達の――“けものフェスティバル”を始めましょう!!!!」
『いえーーーい!!!!』
会場のボルテージはMAXに。
普段、騒ぐ事の少ないフレンズ達にとっての娯楽場として、各々が楽しみ、ストレスを発散出来れば……、そして、何よりジャパリパークに“嘗ての活気”を、そんな想いで運営はこの催しを提供したのだ。
「では先ずは、この方々に登場してもらいましょう!! 三代目になりたて、ジャパリパーク唯一無二のアイドルユニット、
『キャーー!!』
『ペパプーーーー!!!!』
会場に配置されたスピーカーから音楽が流れると、至近距離に居たフレンズの一部がビクッと警戒した。それは聴力に長けたフレンズ達である。
「スピーカーからは音声や音楽、後、演出としてステージ側には照明等が入りますので予め、ご了承下さいね」
マーゲイがフレンズ達に改めて注意喚起を促す。この辺は初めてならではの光景といえるものだ。
PPPの全員がステージ中央に集まり並ぶと、会場から歓声が上がる。
PPPとは、伝説のアイドルユニット
メンバーは、ロイヤルペンギンのプリンセス、コウテイペンギンのコウテイ、ジェンツーペンギンのジェーン、イワトビペンギンのイワビー、フンボルトペンギンのフルルの五人である。PIP時代から各代でもコウテイがチームのリーダーを務めている。
ペンギン目ペンギン科各属の五人。
ペンギンは主に南半球に生息する海鳥で、飛ぶ事が出来ない。飛翔能力が欠如している代わりにひれ状の特殊化した翼“フリッパー”を使い、水中の遊泳を得意とする。首が短く、全身は黒と白の色合いのものが多い。
氷上ではトボカン――腹這いになりながら滑る事をしながら移動し、又、立ち上がった際は歩幅が小さくそろそろと歩く事から“ペンギン歩き”などと呼ばれる。
頭部周辺に着目すると属や種を見分ける事が出来る。それぞれ特徴的な形態を持ち、ロイヤルペンギンはオレンジ色の飾り羽が生え、顔とあごが白い。コウテイペンギンは頭部がスマートで小さく、黄色部が橙色を帯びている。ジェンツーペンギンは両目をつなぐ白い帯模様と嘴の両側の赤色が特徴的。イワトビペンギンは目の上に眉の様な黄色の羽毛が生え、特徴的な冠羽を形成している。フンボルトペンギンは嘴、根本部分がピンク色の皮膚がむき出しになっている点など、各々に外見的な差異が見られるのだ。
性格もそれぞれに違いがあり、プリンセスはしっかり者でプロ意識が強く、ユニットの中核的存在。コウテイはプレッシャーに弱いが、仲間思いで自らの役割に相応しくなる為、努力を怠らないユニットリーダー。ジェーンは温厚で頑張り屋さん、イワビーは負けん気が強く、ロックな魂を持つ熱血キャラ、フルルは物怖じしない天然キャラなど五人が五人とも異色な性質を持っているのだ。
PPP全員の外見は類似している。白い水着に上にジャージの様なものを重ね、それぞれにちょっとしたアイテムを付けている。ペンギン系フレンズ共通の特徴として、ヘッドホンを装備しており、皆、元の種から受け継いだ外見的特徴に多少の違いが見られる。
「PPPの皆さん、こんばんは。今の気持ちはどうですか?」
プリンセスがスタッフのフレンズからマイクを受け取ると、PPPを代表してそれに答える。
「みんな、こんばんは!! こうした機会を与えてもらって、とても嬉しいわ。PPPとして、一フレンズとしても、今日を素敵な日に出来ればと思っているわ!!」
「こんなにフレンズが集まる機会なんて滅多に無いですもんね」
「その通りよ」
「せっかくなんで、一人一人ちょっとした自己紹介を……」
「分かったわ。私はロイヤルペンギンのプリンセスよ」
プリンセスはマイクを横のコウテイへと渡す。そして、それぞれに一言ずつ自己紹介が続く。
「コウテイペンギンのコウテイだ」
「ジェンツーペンギンのジェーンです」
「イワトビペンギンのイワビーだ、ぜ!!」
「ふるるぅ~」
「フルル、漫才は次のプログラムだ。名前!!」
隣のイワビーがマイクの拾わない程度の声量でフルルにツッコむ。
「フンボルトペンギン!」
マイクが一周し、プリンセスに戻る。
「……あはは」
「それでは、準備の方が出来たみたいね」
マーゲイはスタッフ達と細かくコンタクトをとりながら、円滑に事を進めていく。本人も気付かない才能が開花していたのである。
「PPPの皆さん、よろしくお願いしますね」
PPPの全員にスタッフがマイクを渡すと、マーゲイがステージ端に移動し、PPPは所定の配置に付いた。スタッフは打ち合わせ通りに、プリンセスの掛け声を持つ。合図と同時に、音楽が流れるのだ。
「じゃあ、みんな、オープニングの一曲目。いくわよ――!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます