第30話 ゆめりあん 5

 皆が揃ってその呼称こしょうを口に出す。

 と、同時にショウジョウトキのドヤ顔がとまらない。


「その顔は良いから、さっさと話を進めるのだ!」

「き、聞いたことないです……。なんなのですか、あれは……」

「セルリアンであることは間違いないわよね?」

「ええ、セルリアンですよ(ドヤァ)あれは夢の力によって、私達フレンズをこの空間に閉じ込めているのです」

「はた迷惑なやつなのだっ!」

「だから、この様な知らない場所に飛ばされて……」

「ここにいる皆さんはさばくちほーに居たフレンズさん達ですよね……? でしたら、この空間に飛ばされた条件って……」

「眠りについてて、さばくちほーに居たフレンズってわけかしら?」


 移動をしながら考察を続けるアライさん一行。

 そんな声を耳にして、茂みの中から姿を現し二人のフレンズが近づいてくる。


「そうでもないらしい」

「……っ!」


 真っ先にリムガゼルが声の主に反応した。


 そこに居たのはクジラ偶蹄目シカ科ヘラジカ属のヘラジカであった。

 シカ科最大種の動物であり、和名の由来として、雄はへらの様に平たい角を持つ。水辺の森を好み生息し、夜明け頃や日没後に活動をする。食性は草食性で、他のシカがあまり食べない木の枝が大好物である。顔と足が長く、これは高い所の枝に口先を伸ばすことに適した形態と言える。偶蹄目ではあるが、ウシの角=hornホーンに対し、ヘラジカの角はシカ科分類の=antlerアントラーである。これには幾つかの差異があるのだ。


 そして、フレンズ化したヘラジカは自身の特徴である平たい角を模した槍を所持しており、リムガゼルも所属する“けも勇槍騎士団”の創始者でありリーダーなのだ。


 外見は学校の制服の様な格好。色合いはヘラジカの体色を表現しており、首回りにもふもふしたマフラーの様なものを巻いている。髪は黒色のロングヘアーで、角にも見える白のねた部分も髪の一部である。


 ゆったりとした性格をしており、堂々としている為に、他のフレンズから“森の王”と呼ばれている。因みに、ミミちゃん助手からは『けものたらし』や『ポジティブ・キング』などの称号を与えられているのである。


「リムガゼルか。お久しぶりだね」

「ヘ、ヘラジカさ~ん! ヘラジカさんもここに居たんですね~」

「うむ。閉じ込められてしまってね、困っていたわけさ」


 それに付け加える様にして、もう一人が現れる。


「そんな時にショウジョウトキが来てね、私達を案内してくれたってわけ」

「オオカミ、あなたも招かれていたわけね」

「どうやら、そうらしいね」


 ハクトウワシが、知り合いであるオオカミの元へと近寄る。

 

 ネコ目イヌ科イヌ属のタイリクオオカミ。

 現生げんせいのイヌ科の中では最大の大きさを誇る。体毛は灰褐色が殆ど。個体により白から黒までが存在する。


 社会的な群れを形成する生態を持ち、コミュニケーション能力に長けている。その分、縄張りがいから来た他のオオカミは追い払われたり、リーダー争いから敗れたりする個体が孤立し単独で活動をすることなどがある。『一匹狼』の語源もこれ等から生まれたものと云われている。


 フレンズの中でも知性が高く、想像力や思考回路に優れている。性格はクールで社交的な面が強く、交友関係が広い。その為、各地を飛び回るハクトウワシともすぐに友達になったのだ。群れを作らなくなった一方で、代わりに多くのフレンズとの交友関係を重視している。最近は、自身の知性を活かし、何やら創作活動を始めようとしているとか。


 外見は全体的に黒白、二色の服装。白のワイシャツに黒のブレザーを合わせ、白黒チェックのミニスカートを着用している。首元には白のもふもふ、チェック柄のネクタイを締め、黒色のニーソックスを履く。髪型は毛先が跳ねるロングヘアーの黒髪。髪先の一部が灰、前髪の一部が白色になっている。最大の特徴でもあるツリ目は右目がオレンジ、左目が水色のオッドアイ属性である。


 ショウジョウトキは先に遭遇したヘラジカ、オオカミと話をして、他にフレンズが迷い込んでいないか辺りを飛行していた。その最中にアライさん一行を発見し、声を掛けたのだ。ユメリアン付近に待機していた二人であったが、あまりにも暇であった為に、ショウジョウトキの向かった方向へと歩き始め、合流したのが現状となる。


 そして、フレンズが六人となった。


「ヘラジカ、『そうでもない』とはどういうことなのだ?」

「ああ、そうだね。“眠りについて”の点は一致しているが、地域に限定された話しではない、ということだよ」


 再び、オオカミが説明を付け加える。


「ヘラジカはしんりん、そして、私はゆきやまちほーに居たからね。場所は恐らくはランダム、なんじゃないかな?」

「つまり、私達がたまたま、さばくちほーで最初に集まったというわけですか……」

「そういうことかもね」


 リムガゼルの推測にオオカミが答えた。


「ショウジョウトキ、ズバリ現状打破するにはどうすればいい?」


 ヘラジカが答えを急かす。

 そして、その答えはとても簡単に導き出されていた。

 この場に居るだれもがみな、ある程度の察しが付いていたのだ。

 しかし、あえてそれを問う事は、出来ることなら“穏便に事を済ませる”というフレンズならではの“和”を重んじた思考からくるものだった。それに加え、返答を聞く事で切り替えと同時に、より意識を高める事が可能となる。


 物事はあえて言葉に出す事で、より一層の認識を増す事が出来るのだ。


 ショウジョウトキは言われた通りに、言葉に表す。


「決まってます。あれを倒せばいいのです!(ドヤァ)」

「やはり、そうなるのか」

「私は私のすべきことをするだけだわ。たとえ、一人でも私は戦うもの」

「わ、私も……、微力ながら協力します……」


 この現象の核であるユメリアン。これはユメリアンによって創りだされた空間であり、そこへと迷い込んだフレンズ達は幽閉ゆうへいされた状態にある。

 その空間を出る為の方法、それは核であるユメリアンを倒す事だ。ユメリアンの力によって閉じ込められた六人は、今、夢から覚める為に、戦う意志を見せる。


「アライさんも協力するのだっ!」


 アライさんにとっては度重なる連戦となる。

 共通意識が生まれたフレンズ達の間には一つの小さな絆が芽生えた。


「さぁ、行こう。皆であれを倒さなくてはね」


 ヘラジカに続き、一同はユメリアンに更に接近する為、その場から移動した。

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