第28話 ゆめりあん 3

 しばらく移動すると、大型セルリアンの姿がアライさん達にも視認出来る距離へと至る。二人はじっとその姿を目視した。


「あれって……、普通のセルリアンじゃないですよぉ……」

「なんなのだ、あれは……」


 普段見慣れたセルリアンとは似ても似つかぬその姿。

 二人の表情は引き攣ったものへと変わっていた。


ひるんじゃ駄目だわ。きっと、私達の正義は届くはずよっ!」

「ハクトウワシさん……。ですけど、あれは……」

「無理なのだ……。逃げた方が良いに決まってるのだっ!!」


 あまりの大きさに怖気おじけつくアライさんとリムガゼル。その背を押す様にして、ハクトウワシが言葉を掛ける。


「私達が逃げたら、ほかの誰か傷付いてしまう。それなら私は、自分が傷付く方がマシだわ」

「うぅ……」

「…………」


 誰かが必ずやらなければならない事。それを率先して行うハクトウワシの雄姿に、感銘を受けたアライさんが闘志を燃やした。


「ハクトウワシは凄いのだ。アライさんも……、戦うのだぁ!!!」

「えぇ~!! 無謀ですよぉ……」

「一人で無理でも、群れで困難を分け合えば、きっと上手くいくはずなのだ!」

「そうだわ。私達にはこの、正義があるのだからっ!」

「やりますっ! 私もやりますよぉ、もぅ~!」


 二人の情熱ぶりに、リムガゼルも半強制的に戦いに参加する事を決意した。しかし、この三人だけでは圧倒的な戦力不足は否めない。ハクトウワシは戦闘慣れしているものの、スピードに特化し、パワー不足。リムガゼルも速度に特化している為に、パワーはもう一押し欲しいところだ。最後にアライさんに限っては、速度がそこそこあるものの特に目立った能力はなく、強いて言えば頑丈さだけが取り柄である。


「そうと決まればさっそく!」

「ちょっと、待つのだ!」

「? どうしたのよ?」

「突っ込むのか?」

「オフコース! 先手必勝だわ!」


 突っ込む事が取り柄のアライさんが今ばかりは制御する方に回っている。普段はフェネックの役割であるその席を、アライさんが座る。それ程までに今回のセルリアンを特別視しているのだ。


「何か考えないと、突っ込むだけでは勝てないのだ……」


 この場にフェネックが居たのなら、普段は余裕そうな表情の彼女も感動のあまり涙の一滴を流すかもしれない。普段吐く事のない台詞をアライさんは当然の様に言ってのけた。


「ま……、間違えないですね……」

「んんー……、どうするのがベストなのかしらねー?」


 アライさんは今までの戦いを思い出す。

 こんなアライさんではあったが、それなりに歴戦を重ね、最も重要な生残せいざんを繰り返しているのだ。運も味方し、経験だけは豊富である。


 戦績だけで語るなら、両者共々、生き残っている事からハクトウワシとも同格と言えるだろう。


「やはり、囮で引きつけるのがいいのか……。こういう時にフェネックが居てくれれば……」


 現状、放れる事の少ない相方はこの場には居ない。

 こういった局面に陥る事で、普段のありがたみを心底感じるのであった。


「どうすればいいのだ……」

「ショウジョウトキは赤くて綺麗!(ドヤァ)」

「…………」

「…………、何か言ったか?」


 微かに聞こえた声に反応し、アライさんは二人に問う。

 リムガゼルもハクトウワシも小さく首を横に振る。


「ショウジョウトキは赤くて綺麗!!(ドヤァ)」

「???」

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