第25話 あなぐら
*
一度、小さなオアシスへと寄り、スナネコの住処である穴倉へと到着したアライさん一行。心身ともに疲れたアライさんはその場へと倒れ込む。
「ひんやりしていて気持ちいいのだ……」
サラサラとした砂が万遍無くひかれた地面は日中も太陽光を浴びる事はないので、とてもひんやりとしている。穴倉には入口と砂山の他に特に目立ったものはない。
スナネコが砂山の下を軽く掘り出すと、ジャパリまんを取り出し二人に分け与える。
「ジャパリまん、食べますか?」
「貰うのだ。やったのだー!」
「ありがとうー。そこに溜めてあるの?」
フェネックは穴倉に唯一ある特徴的な小さな砂山を見る。
「はい。定期的に探しては、ここへと埋めているのです」
「どこぞの博士達と一緒だねー」
「はい。博士達? ……あっ! 博士達を一度、遺跡の手前まで案内したことがありますよ」
それは昔に、コノハ博士とミミちゃん助手がさばくちほーの現地調査を行った際の出来事である。現地案内役の一人としてスナネコがその調査に協力したのだ。
「いせきー?」
「もぐもぐ……。なんなのだ、それは?」
「遺跡は……、迷路の様な、場所です」
「ゴクリ。よく分からないのだ」
「そこを潜って、洞窟エリアを抜ければすぐに着きますよ」
スナネコは穴倉の後方を指差した。
「アライさん。遺跡っていうのはー、お宝が眠ってる場所なんだよー。昔、カラカルから聞いたことがあるよー」
「お宝!? フェネック! さっそく向かうのだ! お宝がアライさんを呼んでいるのだ!」
「アライさんー、バカなこと言わないでよー。戦いで疲れてるんでしょー? それに本来の目的はサンドスターが吹き出した場所に向かうことだよねー?」
「あっ……」
「そうなんですか?」
「アライさんがさー、前にサンドスターが吹き出したのを見て、『調べにいくしかないのだっ!』って張り切っちゃってさー。楽しいから良いんだけどねー」
「それは面白そうですね! …………、でもまぁ、騒ぐほどでもないか」
「どっちなのだっ!」
「それよりさー、アライさん。今、『あっ……』って言ってたよね? もしかして、忘れてたとかー?」
「そ、そんなわけないのだっ! 新しいフレンズは必ず居るに違いないのだ。そして、アライさんに会えるのを待っているのだっ!」
「うん。つまり、興味本位で向かってるってわけさー」
「なるほど。では、今日はゆっくりしていってほしいのです。この穴倉は安全なので、安心して眠りにつけること間違えないです」
「助かるよー」
「ジャパリまんを食べたら眠くなってきたのだ……」
「砂漠の夜は冷え込みます。寒くなったら、体を砂に埋めるといいですよ」
ウトウトし始め、寝転がるアライさんの体に砂を掛け始めるフェネック。
スナネコが入口に注意を向け、一日の最後の警戒で辺りを見渡し中へと戻る。すると、そこには体が砂中に埋もれて、頭だけが地面に飛び出たシュールな絵面のアライさんが気持ちよさそうによだれを垂らしながら爆睡していた。
「ふふっ。面白いですね」
「これでいいかなー。朝になったらー、体も全部出てそうだけどねー」
「日も落ちましたし、ぼく達もそろそろ寝ましょう……、ぼくも眠い……ので……」
「そうだねー、今日は疲れたからねー……、おやすみ……」
「はい。おやすみです」
さばくちほーの夜。
満月が照らす砂漠一帯。微かな光りが穴倉に射し込む。
静寂に包まれながら三人は眠る。今日の疲れを癒す為に。
すぅすぅと、小さな呼吸音を響かせながら。
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