第19話 おあしす・わん 3

「あはは。それはそうと、ラビラビ。さばんなちほーを探索していたら、中心部にセルリアンの小さいのが沢山居たよ。このままだと、ここに来るのも時間の問題なんじゃないかな?」

「それは困ったね。数はどのくらい居るの?」

「それなりに。小さいからといって油断は出来ないねっ!」

「オアシス・ワンでの戦闘は避けなければならないからね」


 ラビラビの視線はバリケードに向けられていた。

 以前、さばんなちほーでセルリアンとフレンズ達の戦闘が行われた際、オアシス・ワンを囲うバリケードの一部が破損したのだ。それを修復するのに多くの労力が費やされた。さばんなちほーのフレンズだけでは知恵が足りず、博士達に協力をあおぎ、仲間の労働を得て、つくろい直した大事なバリケードを再び壊す訳にはいかない。そんな強い気持ちがあったのだ。そして、それら事情を全て把握しているルルもまたラビラビの視線からそれを容易く察し、同様の感情を抱いていた。


「うんっ! そしたら、中心部まで行って迎え撃つ?」

「戦い方はどうであれ、まず私達は移動しよう。セルリアンをこっちに向かわせないためにも」


 早くも戦闘モードの二人を差し置いて、休憩中の二人が話し合う。


「アライさーん、またセルリアンだってー。なんだかえんがあるねー」

「そんな縁はいらないのだっ! どうして、どうしてこうなるのだー」

「恩人のためにも私達も働かなきゃねー」

「やっぱり、そうなるのか?」


 オアシス・ワンを救う事はフタコブラクダにとっても、さばくちほーに住む多くのフレンズにとっても、恩を返す行為に同義となる。


「ほらー、博士達も言ってたでしょー。恩を受けたら返そうねって。そしてー、フレンズ達が繋がっていくんだよー。アライさんも、『勿論なのだ!』とか言ってたよねー?」

「はぁ……、分かったのだ。分かっているのだ!」


「うん。じゃあ、フタコブラクダにここに居てもら……」


 珍しく真面目な会話を繰り広げるラビラビとルル。そんな中、会話をさえぎる様にして、アライさんが二人に近付いた。


「アライさん、どうしたの?」

「いやー、その……、協力するのだ」

「?? 本当にっ?」


 ルルは嬉しそうに、聞き返す。


「うむ……。仕方ないのだ。ここはアライさんに任せてほしいのだ!」

「ありがとう、アライさん。心強いね、ルル」

「そうだね、さぁー! そうとなれば、さっそく移動するよー!」


 そう言い捨て、突発的にその場から駆け去るルル。その移動速度は尋常では考えられない速さであった。


「おおー、速いねー。それはそうと、アライさーん、あんな大口叩いて大丈夫なのー?」

「つい、勢いで言ってしまったのだ……」

「うーん、やっぱりねー。まぁ、なんとかなるかなー?」


 フェネックは適当な返しをする。

 そんな中、ラビラビがフタコブラクダに近付き、話の成り行きを説明しようとする。


「状況は分かる?」

「ふわわ……。んー、ある程度は聞こえてたよー」

「それじゃあ、このままここに居てほしい。お願いできる?」

「うん。多分、この後、お姉ちゃんが来るはずだから適当に待ってるよー」

「ヒトコブラクダが? 分かったよ」

「またねー」

「行ってくるよ!」


 こうして、オアシス・ワンにフタコブラクダを残し、セルリアンとの戦闘に向け、一行は中心部へと赴く事となった。

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