第674話史のマラソン大会(3)
史のマラソン大会での優勝を祝して、カフェ・ルミエールでは、里奈やクラスメイト、三輪担任や菅沼剣道部顧問まで集合して、ケーキ大会、大盛り上がりになっている。
「史君!すごかった!」
「本当にきれいなフォームでいいなあって」
「風邪は大丈夫?疲れていない?」
生徒たちからは、次々にそんな声。
パテシィエの洋子は、驚きを隠せない。
「由紀ちゃんから連絡あった時は、36度9分でね、よく走ったね」
「そのうえ、優勝なんて」
奈津美は泣いている。
「もーーー!ずーっと心配だった、倒れちゃったらって」
結衣と彩は、奈津美のもらい泣き状態で、声が出ない。
三輪担任は、
「まあ、とんでもない体育講師の暴言はあったけれど、結果がこれでよかった」
菅沼剣道部顧問は、眩しそうに史を見る。
「史君、フォームも良かったけれど、呼吸法はあれ?」
史は恥ずかしそうな顔。
「はい、菅沼先生に教えていただいた通りに」
菅沼は、笑う。
「なかなか、実践できることではないのにね」
史は、また恥ずかしそうな顔。
「苦しい時ほど、使える教えと思うんです」
そんな時に、学園長が笑顔で入って来た。
「史君、おめでとう、苦しい思いをさせたね」
と、しっかり握手。
そして全員に小声で、
「あの体育顧問には厳重注意してきた」
「理事会案件にするので、厳しい処分もあるかもしれない」
史は、少し戸惑い顔、他の生徒たちは、ホッとしたような顔。
ただ、学園長は、その話は続けない。
「さあ、せっかくのパーティー」
「美味しいケーキと飲み物で盛り上がろう!」
「そうだな、私はザッハトルテがいいなあ」
と、どんどん、ケーキの会に加わっていく。
洋子は、笑ってしまった。
「さすが、締めるところは締める学園長だけど、生徒の心をつかむのが上手」
奈津美は、涙顔から笑顔に戻った。
「学園長は、地域のいろんな店に顔を出して、親睦を深めるんです、木村和菓子店にもよく来られます」
結衣は、学園長のパーティーへの溶け込み方に注目。
「みんな話しやすいのかな、話題がポンポンふくらんでいる」
彩は、学園長にザッハトルテを持って行き、戻って来た。
そして、驚いた顔で洋子に
「今日のお代は、学園長が全てお支払いとのこと」
「部下とか学生に払わせたくないって」
洋子は、うれしくてしかたがない。
「いいなあ、そういう上司って、人間が大きい」
由紀が入って来た。
そして史を見つけて飛びついた。
「あーーー!心配したー!もーーー!このアホ!」
今回はポカリではなかった。
むしゃぶりついて、大泣きになっている。
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