第613話由紀と史のデート?(2)

午前10時、史は「キチンとした」スーツに着替え、リビングに降りた。

リビングでは、由紀が待ち構えている。

そして、史に

「まあ、よろしい、少し七五三風だけど、可愛いから許す」

と、まずは服装判断を下す。


史は

「七五三って何さ、子ども扱いして」

「自分だって童顔のくせに」

と思うけれど、余計なことは言わない。


それでも聞いてみた。

「で、どこの懐石なの?」


由紀の答えは

「銀座だよ、でも、本店は京都だって」

と、PCから印刷したホームページを差し出す。

予約もインタネットでできるのか、「予約成立済」となっている。


史としては

「最初から言うべき」と思うけれど、ここでも余計なことは言わない。

それでも、

「京都の懐石の料理人が、銀座でねえ・・・清さんみたいだけど」

「清さんは、関東の味で相当苦労しているよ」

と少し考える。


由紀も、その「清さんみたい」に反応する。

「うーん・・・清さんには言っていないけれど、まずは食べてみないとさ」


由紀と史が、そんな話をしていると母美智子が声をかけてきた。

「まあ、難しく考えずにね、美味しければ美味しい、ダメならダメで素直に感じて来なさい」

「でも、余計なことは言わないでね」

「あなたたちは、京都のお屋敷の味で育っているから、難しいこともあるかも」

少し微妙な発言である。


史は、その母の言葉の意味を感じ取った。

「わかった、素直に判断するよ」

「それも、参考までに清さんに伝える」


由紀は、途中から時計を気にしはじめた。

そして史に

「そろそろ出発、予約の時間もあるから」

と、声をかけた。


史も、それには反応。

「じゃあ、母さん、行ってきます」

と、二人で玄関を出ていった。


さて、家に残った美智子は、その印刷したホームページを見ている。

そしてつぶやいた。

「なにか・・・うーん・・・」

少々心配気な表情に変化している。


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