第605話華蓮と史のデート(1)

カフェ・ルミエール文化講座開講関連の行事も全て無事終了。

史が家に戻り、いつものように真面目に勉強をしていると、華蓮からスマホにコールがあった。


華蓮

「史君、さっき忙しくて言えなかったんだけど」

「え?何?」

華蓮

「ちょっとデートにつきあってほしい」

「マジ?僕は勉強があるから」

華蓮

「いいじゃない、少しくらい外出したって、推薦決定済みの史君」

「道彦君は亜美ちゃんとデートだから、誘えないしさ」

「だって、僕は従弟で年下だよ?デートって感じじゃないよ」

華蓮

「それは、私を年増とかおばさんって思っているわけ?」

「えーーー?そんなこと言っていないって!」

華蓮

「じゃあ、いいじゃない!里奈ちゃんだって、私と史君じゃ心配しないって」

「華蓮ちゃん、それ、どういうこと?じゃあ僕が子供ってこと?」

華蓮

「うん、可愛い子供顔」

「それって、まるっきりイジメだ」

華蓮

「いいから、明日は迎えに行くから、準備しておいて」

「どうしてそう強引なの?昔からそう」

「で、どこに行くの?」

史は、結局、華蓮からのデートを断れなかった。

子供の頃から、華蓮に「口」で勝ったことはないし、姉の由紀に叱られた時の「避難先」であった華蓮には、一方ならない恩義を感じていたのである。


華蓮は、そのデート先に意外な場所を言う。

「まずは神保町に行く」

「え?神保町?本でも買うの?」

華蓮

「それもあるけれど、文房具とかも見てくる」

「まるっきり事務的なデート?」

華蓮

「うん、それもある」

史は首を傾げた。

「それもあるの意味が不明」

華蓮

「神保町で、事務的なことを少しして、その後、少し歩こう」

「どこ?」

華蓮は、そこでフフッと笑う。

「史君の大好きな・・・あそこ、この時期にね」

史は考え込んだ。

そしてわかった。

「神田のね、あそこ?うん、行く!」

「今日みたいな豪勢な料理の後はいいなあ」


史は最初は抵抗したものの、華蓮の「目的地」を察したようだ。

察した時点で、ウキウキとなってしまった。

それでも心配がある。

また姉の由紀が、何かと言ってくること。


「姉貴に言うのが面倒くさい」

華蓮

「しょうがないなあ、じゃあ、由紀ちゃんには私から言っておく」

「清さんの手伝いさせるかな」

「ありがとう、さすが華蓮ちゃんだ」


史には、いろんな意味で、うれしいお誘いであった。




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