第517話華蓮と由紀と史(1)

カフェ・ルミエールで、京極華蓮の歓迎パーティーがあった翌日。

由紀がソワソワしている。

その理由は、華蓮からメールがあったこと。

「華蓮ちゃんが午後三時に家に来る?」

「お父さんと打ち合わせ?」

「そんなのどうでもいい、早く華蓮ちゃんの顔が見たい」

やはり、子供の頃に一緒に遊んだ華蓮と会いたくて仕方がないらしい。


同じようにメールを受けた史は、冷静。

「へえ、懐かしいね、この間の新年会は華蓮ちゃんが事務局で忙しかったので、声もかけなかったけれど」

「でも、僕も受験勉強があるから、あいさつぐらいはするかな」

特に、いつもと変化はない。


母美智子は、時計を気にしている。

「パパも時間を言ってあるのに、大学から、なかなか帰って来ない」

「今日の授業は午前中だけのはず、それと文化講座はこれからの大切な仕事なのに」

「私も関係するのかな、いいや、パパが遅くなったら由紀と私で相手をするかな」


三者、様々な状態で華蓮を待っていると、予定の午後三時きっかりに玄関のチャイムが鳴った。

そしてインタフォンから京極華蓮の声が聞こえてきた。

「お久しぶりです、京極華蓮です」

何とも、涼やかな声。

由紀は、我慢できなかった。

インタフォンに返事もせずに、玄関までダッシュ、扉を開けてしまう。


そして、「予想通り」大騒ぎになる。


由紀がまず大興奮。

「きゃーーー!華蓮ちゃん!おひさーーー!」

「すっごく美人!ますます!」


華蓮も、笑っている。

「そんなことないよ、由紀ちゃんも顔だけでもモデルになれるって」

「すごくきれいに成長した」

そんなことで、二人はハイタッチをしている。


美智子も出てきた。

「さあさあ、華蓮ちゃん、マスターから昨日の話は聞いていますよ」

「とにかく家に入って」

「由紀も、どんどん動きなさい」

ついでに、由紀を叱っている。


さて、華蓮がリビングに入ると、美智子はかねて準備してあったのか、冷蔵庫からケーキを取り出して来た。

そして由紀は、緑茶を淹れている。


華蓮は、まず、ケーキに目を丸くする。

「え?これ・・・初めて見ました」


由紀は、得意満面。

「そうなの、創作メニューの、栗きんとんタルトなの」

「緑茶に合う、和風洋菓子というか洋風和菓子」

「ちょっと前にね、新作お菓子研究した時に作ったの」


華蓮は、うれしそうな顔。

しかし、やはり二階を気にしている。

「あの・・・史君は?」

なかなか顔を見せない史が、気になっているようだ。

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