第456話史の意外な提案

翌朝になった。


史の昨晩は、愛華や加奈子、由紀とも別行動、大旦那と源氏物語のお香について、長々話をしていた様子。

そのため、史も大旦那も、少々眠そうな感じ。

それでも、二人の間には、何らかの計画が出来上がっているらしい。


さて、大旦那のお屋敷では典型的な、和風朝食、アジの干物、佃煮、玉子焼き、豆腐のお味噌汁が並んでいる。


史がまずご飯で一言。

「すっごく美味しいお米、ふっくらとして甘みがある、炊き方も最高です」

すると奥様

「確かに、お米は近江米で昔からお付き合いのある農家から」

「でも、お米は炊き方ですよ、水加減とかもあります」


愛華は、お味噌汁で感激。

「この出汁かなあ、お味噌もお豆腐も、深みがある」

大旦那はそんな愛華に目を細める。

「そうだね、このお味噌もお豆腐も、かなりの老舗、この屋敷でも数十年付き合っているんだ」


加奈子はアジの干物を目を閉じて食べている。

「うちは、この干物が大好きや、京都だとここまではない食べれば食べるほど食欲がわく」

史が加奈子に

「おそらく沼津の干物かな、しっかりと天日干ししてある感じ」

と言うと、大旦那もうれしそうな顔。

「よくわかった、実は、沼津の漁港から特別に運んでもらったんだよ」


奥様は、そこで笑いだした。

「だって、大旦那がどうしても朝ごはんを、この家でって言うから」

大旦那も笑っている。


ずっと、ニコニコと「食べるだけ状態」だった由紀も一言。

「こういうしっかりとした朝食っていいですね、加奈子ちゃんも言っていたけれど、食べる力がわいてくれば、元気もわいてきます」


その一言には、全員が同感らしく、ますますなごやかに食事が進んだのであった。


さて、その朝食の後は、お屋敷のお庭の散歩や雑談などで過ごし、お昼の相談になった。


由紀が愛華と加奈子に声をかけた。

「ねえ、品川から帰るのかな、お昼はどうする?何か食べたいものはある?」

しかし、愛華と加奈子はそう言われても、なかなか思い浮かばない。


すると史が、ひとつの提案。

「品川から帰っても、東京から帰っても大して時間がかわらない」

「東京駅の近くのほうで、少し考えよう」

「といっても、あまり豪華なお食事ではなくてさ、普通の都内の味」


それには愛華と加奈子が、うれしそうな顔。

愛華は

「そうやねえ、おまかせ」

加奈子も

「うん、史君のセンスにまかせる」

と簡単に了承。


史は、愛華と加奈子の了承を得たので、由紀に何かを耳打ち。

由紀も

「ほーーー!あそこ?それは、食べたい!」

途端に、ニコニコしている。





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