第416話車内で責められる由紀

マスターは、由紀に叱られて意気消沈となった史を助手席に。

由紀、愛華、加奈子は後部座席に乗せて、走り出した。


そして、全員にまず一言。

「今日の話は、竜の言動が、まず一番悪い」

「それについては、大旦那と愛華ちゃんのお父上の雅仁さんが、きちんと決着をつけるから、君たちは特に何もしなくてもいい」

「おそらく、特に竜と竜の関係する音楽家斡旋団体には厳しい処分となる」

「その音楽家斡旋団体は、大学と関係を結んでいたけれど、その穴埋めは大旦那が別の良心的な団体に話を既につけた」

「今頃は、大学に向かっているはず」

と、そこまで言って、マスターは一呼吸。


そして由紀に

「由紀ちゃん、さっきも言ったけれど、由紀ちゃんは史君を支配しようと、やり過ぎ」

「それにね、一族としても、史君を音楽家として、支援する計画は出来上がっているんだ、全員が本当に期待している」

「史君が、音楽史と併用するのも、もったいないというくらいの人もいる」

「ましてや、サラリーマンなんて、とんでもない」

「あちこちに神経を使う史君なんだ、その史君が懸命に悩んで結論を出したんだ」

「そんな史君の気持を考えないで、ただ竜に絡まれたくらいで、音楽をやめろなんて、それはひどいよ」

「それじゃあ、史君が竜に負けたようなことになる」

「由紀ちゃんは、そんなんでいいのかい?」

「一族に、どうやって説明するんだい?」

愛華も加奈子も、驚くようなマスターの厳しい言葉の連続になった。

由紀は、ガクガクと震えだしている。


マスターは、言葉を続けた。

「晃さんも、美智子さんも、言いづらいと思うから、俺が言っている」

「かの有名な榊原先生、内田先生にも、あれほど期待されている史君なんだ」

「その期待を、竜に絡まれたくらいで、由紀ちゃんは、裏切らせようとしている」

「それも、史君に全く非がないのにさ、それでは史君にも、一族にも、先生方にも、史君の演奏を聴きたいと思っている人たちにも、ひどすぎる」


加奈子が口を開いた。

「由紀ちゃん、マスターの言うとおりや、うちら、迷惑をかけられたなんて、何も思うとらん、気分を害したのは由紀ちゃんの史君への言葉や」


愛華も、続いた。

「うちな、史君の室内楽をすごく聴きたかったんや、史君のあんなうれしそうな顔って見たことなかったし」

「それを、はしゃいでいるとか、うちらに迷惑をかけるなんて、どうでもいい気を由紀ちゃんが回したんや、そのほうが余程気分が悪いわ」


由紀は、責められて、顔をおおって泣き出してしまった。

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