第378話音大訪問(2)音大玄関前で不穏?

史と由紀は、少々ムッとしながら音大の中に入った。

由紀

「あいつも音大生なの?ああ、気に入らない」


史は、その革ジャンリーゼント男の性格まで、判定している。

「関わらないほうがいいね、すごく無神経な感じ」


由紀

「まあ、そうだね、史にしてはマトモなことを言う」

などと言って、音大のキャンパスを歩きながら見渡している。


なかなか、広いキャンパス。

木々も美しく植えられ、手入れもしっかり出来ている。

また、あちこちに、ヴァイオリン等の弦楽器を持った学生も歩いているし、ホルンを吹いている学生も見える。

また、少し離れた池の前では、ギターを弾いている学生、そしてその前でフラメンコ風の踊りをしている女子大生だろうか、そんな様子も見える。


史は

「何回か来ているから、だいたい同じだなあ」

と、どうでもいい雰囲気になっているけれど、由紀は違う。

とにかく面白そうな顔になっている。

「わーーー!あそこで合唱部で歌ったらいいなあ、こんなきれいで広いキャンパスで、音楽に理解が深い人たちの前で歌いたいなあ」


それを聞いた史

「あのさ、今日は僕の用事でしょ?」

「姉貴は、ついて来たいって言ったから、しょうがなく連れてきてあげたの」

「それを、わきまえて欲しいなあ」

と、ついつい文句の一つ。

その文句のついでに

「ねえ、そんなキョロキョロしないの!」

「さっさとレッスン室に行こうよ」

と言うのだけれど


由紀

「うるさい!やかましい!」

と言って、キョロキョロを止めない。


ただ、由紀がそんなことを言っても、榊原先生と内田先生との待ち合わせ時間も迫っている。

史と由紀は、少々ブツクサ言い合いながらも、校舎の玄関まで進んだ。


史が玄関前で

「さあ、もう10分前だよ、急ごう」

と由紀に声をかけた時である。


由紀が、史の顔を見た。

そして

「ねえ、史・・・さっきのバイクがあそこに」

と、不機嫌な顔になる。

史は

「まだ、そんなこと気にしているの?関係しないって言ったでしょ?」

と、由紀に答えるけれど、由紀の不機嫌な顔は変わらない。

それどころか由紀は

「ねえ、あそこにいる」

と、玄関の先に「いる」姿も見つけたようだ。


その由紀の言葉で、史も気づいた。

そして、史も不機嫌な顔になった。

「校舎内に立っているのは、音大生なら当たり前なんだけどさ」

「・・・どうしてあんな顔をして、僕達を睨んでいるわけ?」


確かに、その革ジャンリーゼント男は、腕を組み、史と由紀を怒ったような目で、睨みつけている。

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