第353話お屋敷に到着
由紀は、史のスマホを見て首を傾げている様子が気になった。
「史!何かあったの?」
史は、首を傾げながら
「うん、加奈子ちゃんがお屋敷で待っていて、着いたら即練習だって」
「それはいいんだけど、愛華ちゃんもお屋敷にいるんだって」
「愛華ちゃんも、演奏するのかなあ」
「何の曲かなあ」
史の関心は、愛華そのものよりは、愛華との曲に向いている。
しかし、由紀はそんなことには関心がない。
「う・・・マジ?愛華ちゃん、早速アプローチ?」
「加奈子ちゃん、どうして止めないんだろう」
「あーーー面倒・・・」
「・・・って、もうお屋敷見えているし・・・」
由紀の動揺はともかく、車は広い敷地内に入り、お屋敷の玄関の前に横付けになった。
ここでも運転手と執事吉川がサッと車のドアを開け、晃一家を降ろす。
そして車内の荷物はどんどん、別邸の中に運び入れている。
晃
「じゃあ、先に兄さんと姉さんに挨拶だなあ」
と美智子に声をかける。
美智子は
「そうね、当然です」
由紀も史も従うしかない。
由紀は少し焦り顔、史は由紀の表情など関心がないので、普通の顔。
さて、晃一家が玄関に入ると
まず晃の兄にして現当主の孝、妻彰子が立って待っている。
そしてその後ろに加奈子と愛華が待っていた。
晃は
「兄さん、彰子姉さん、お世話になります」
「それから、ああ加奈子ちゃんと愛華ちゃん?大きくなって美人になったねえ」
スッと頭を下げる。
美智子、由紀、史は、神妙に頭を下げる。
出迎えた孝もうれしそう。
「さあ、食事の準備もできているから、どんどん」
彰子も
「あらーーー美智子さん!懐かしい・・・今晩飲もうよ、女だけで」
ニコニコと笑っている。
加奈子は、ここでは普通を貫こうと思った。
「はい!憧れの晃叔父さんと、美智子叔母さん、お久しぶり!またケーキ作りを教えてください」
「由紀ちゃんと史君は、風邪はなおったの?」
とにかく無難な挨拶につとめた。
さて、愛華は晃一家に、深々と頭をさげ、キチンとしたお礼を述べる。
「お久しぶりです、愛華です、先般は史君に本当にお世話になりました」
そして、再びその顔をあげると、既に顔が真っ赤。
史をその赤い顔で、まっすぐに見つめてくる。
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