第327話加奈子と由紀の不安
史が歌い始めると、里奈はいてもたってもいられない。
とにかく史の歌う小ステージの前まで、進み聴いている。
史も里奈に気づき、ニコッと笑う。
里奈は、そんな史が本当に好きだ。
顔が赤くなるけれど、一歩も史から離れたくない。
そんな里奈を見ている大旦那は
「ああ、いい娘さんだ、あれほど思われて史も幸せだ」と満足顔。
里奈の祖母佳子も
「まさか、大旦那にそこまで言われて、里奈も幸せです」
と、うれしそうだ。
奥様も
「史もありがたいことです、初々しくていいなあ」
と、佳子に声をかける。
また、史のカントリー風ソロは、音楽家集団にも好評。
「ああ、いいなあ、歌い方に変なクセがない」榊原
「高音が伸びやかで、低音も響く。声楽家もいいかも」岡村
「あの史君は、音楽の心を知っている、だから何をやらせても、聴く人の心に響く」内田先生は、目を細めている。
先生方についてきた音大生などは、「聴き逃せない」として。一曲目から飲食はそっちのけで、史の前で聴き続けている。
さて、史の家族と里奈の家族は和やかに話をしている。
晃は
「本当に里奈さんにはお世話になりまして」
美智子も
「里奈さんがいたから、今の史があるんです」
と頭を下げると
里奈の父は
「いやいや、こんな立派なご一族のご子息とは、里奈も幸せです」
里奈の母も
「本当に、そのお話を聞いた時には、震えてしまいました」
と、つい本音。
晃は
「いや、わが母とも、佳子さんともお知り合いだったようで、私も佳子さん覚えています、ですから実は長い付き合いです」
と、にこやかである。
里奈の祖母の佳子も
「はい、史君は、晃さんにそっくりです」
とクスッと笑う。
大旦那も、会話に加わった。
「史は、学者にしようと思ったんだけど、今日のを聴いてしまうとね」
少し苦笑いをする。
奥様も
「うーん・・・史は学者って言っているみたいで、それも西洋中世史とか」
困ったような顔をする。
晃が
「こればかりは、本人なんだけど」
そんな話が続いている。
さて、加奈子は、ずっと里奈と史の様子を見ていた。
そして考える。
「あの二人に、愛華ちゃん入り込めないけど」
「うーん・・・それでもなあ・・・不安だ」
そんな加奈子に由紀が声をかけた。
「大旦那も奥様も、里奈ちゃんを認めているしさ」
「愛華ちゃんは、無理じゃない?悪いけれど」
「そもそも、史本人が里奈ちゃん一筋だよ」
加奈子は、ますます難しい顔になる。
そして由紀に
「ねえ、愛華ちゃんの性格知っているでしょ?」
と、すごくマジな顔。
由紀は、そのマジな顔に反応した。
「・・・そこまで?愛華ちゃん・・・」
由紀も、不安な思いに包まれている。
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