第324話二つの家族の対面

史と一緒に里奈の祖母の佳子、そして里奈の両親が、歩いてくる。

里奈は、ますます真っ赤な顔になる。


奥さまが里奈の祖母に声をかける。

「佳子さん、こちらですよ」

などと言いながら、里奈の祖母佳子に向かって、歩きだしている。


大旦那は、その姿を見て笑っている。

「しかたないねえ、長年の旧友なんだ」

晃も気づいた。

「そういえば、お顔を拝見したことがある」

懐かしそうな顔になっている。


里奈の家族は、とうとう史の家族の前に立った。

そして里奈の祖母、佳子が頭を下げる。

佳子と一緒に里奈の両親も頭を下げる。


また、史の家族も頭を下げると、佳子が大旦那に


「大旦那様、佳子です、お久しぶりです」

「晃さん、ご立派になられたわね、あんなに小さかったのに」

「それから、本当に里奈が史君や、ご両親様、お姉様の由紀さんにお世話になって」

と、しっかりと御礼の言葉を述べる。


大旦那は

「いやいや、佳子さんのお孫さんとは」

「そんな頭を下げないでください」

「お世話になったのは史です、何しろ里奈さんが本当に頑張ってくれたから、今日の史もありました」

その大旦那の言葉に、史は当然、史の家族も里奈の家族に頭を下げる。


そして、大旦那は言葉を続けた。

「さあ、寒いですので、全員バスに乗ってください」

「固い話はここまで、打ち上げパーティーにいらしてください」

と声をかけると

晃からも

「是非、ご一緒に」

と、頭を下げる。


そして、二つの家族が笑顔で、まずはバスに乗り込んだのである。


バスの中で、奥様が里奈に声をかけた。

「ねえ、里奈さんは、柔道部なの?」


それを聞かれた里奈

「はい・・・少し恥ずかしいのですが」

と、やはり「少々」引け目を感じているようだ。


しかし、奥様はそんな里奈にクスッと笑う。

「あのね、里奈さん、そんなことを気にしてはいけないの」

「何しろね・・・」

と言って、里奈の祖母の佳子にウィンク。

佳子も、笑っている。


「え?」

里奈は、ウィンクと祖母の笑みが理解できず、キョトン顔になる。


奥様は、そんな里奈に

「何しろ、私と佳子さんはね、女学校の薙刀部なの」

「二人して、薙刀で剣道部の大旦那をやっつけたこともあったの」


ますます「え?」となる里奈に奥様がもう一言。

「史がブツブツくだらないことを言ったら、投げ飛ばしてちょうだい」

「私が許します」

笑って言い切ってしまった。


バスの前方に乗った大旦那は、頭をかいている。

史は、「え?マジ?」の顔。


史の家族も里奈の家族も笑いだしている。

由紀は

「うん、思いっきりでいい」

やっと、普段の顔に戻った。


ただ、加奈子は複雑な表情になっている。







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