第290話史の京都散歩(13)
演奏が全て終わった。
史と加奈子は、別室で食事となった。
別室での食事も、パーティー会場と同じに豪華なもの。
フワフワのトリュフオムレツ、牛ヒレ肉のステーキ、コンソメスープ、京野菜のサラダ、焼き立てパン・・・様々である。
史も加奈子も、お腹が空いたのか、しっかりと食べている。
史
「なんとかできた、失敗はなかった」
とホッとした顔。
加奈子は
「うん、さすが都大会優勝だね、すごかった」
と満足気味。
招待客を全て見送り、この屋敷の主人の雅仁と良子、愛華も別室に入ってきた。
雅仁
「史君、本当にありがとう、素晴らしかった」
良子も感激している。
「ほんまや、あの小さい頃、可愛らしくて仕方がなかった史君が、こんな素晴らしいピアノを弾くなんて」
涙ぐんでいる。
愛華も
「明日帰っちゃうのが、悔しいくらいや、ずぅっと聴いていたい」
と複雑な顔。
叔父の孝と、圭子、彰子も別室に入ってきた。
孝
「史君、お疲れさん」
ポンと肩をたたく。
史は
「あ、はい、拙い演奏で」
と、頭を少し下げる。
圭子は
「いやいや、うっとりや、今後悩むなあ」
と、つい本音。
彰子が、続いた。
「史君は、音楽のプロになるのか、古文を勉強するのかってな、みんな悩んでいたんよ、なあ、本人より周囲が悩むんや」
と、クスッと笑う。
ただ、史は「そんなことを言われても」状態。
それでも
「音楽は、プロになるかどうか、あまり考えていません」
「古文をやるかどうか、違うのも考えている程度で」
つまり、まだはっきり決めていないと言う。
そんな話が続き、夜も九時になった。
史は、孝たちと一緒に帰ることになる。
愛華が史に声をかけた。
「史君、明日は何時に帰るの?」
史は、ここでもしっかり決めていなかった。
「うーん・・・お昼ぐらいかなあ」
「明後日は学校があるから」
「えっとおみやげとか、買って帰る」
愛華は、少し必死顔。
「史君、そこまでご一緒する」
史は
「え?」
と、キョトン顔になっている。
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