第277話牡蠣の土手鍋

史が、家のキッチンで何か作っている。

どうやら土鍋に何かを入れている。

母美智子が手伝っているけれど、由紀は入れない。

入ろうとすると


美智子

「まだ寝てなさい」

史にいたっては

「作業の邪魔」

本当に素っ気ない。


由紀は

「ふんだ!仲間はずれだ、部屋で泣いてやる」

と思ったけれど、おそらく病み上がりの自分を心配していると思ったから、すんなりと部屋に。


さて史は

「えーっと味噌は八丁味噌にしよう」

「味が濃いけど、滋養強壮だから」

で、土鍋のふちの上部に、八丁味噌をしっかりと、塗る。


美智子は

「さて、水と昆布、そして野菜を入れて、グツグツと煮る」

「野菜は産直市から」


味噌が溶けはじめて来た。

野菜にも八丁味噌の味が染み込んでいく感じ。


「うん、独特のいい香り」

美智子

「由紀は感づいたな」

「いい香りだもの」

二階の由紀を思いやる。


「そろそろ牡蠣をいれよう」

美智子

「そうだね、頃合いかも」

「由紀を呼ぶ?」

と言ったところで、由紀が二階から降りてきた。

おそらく待ちきれなかったらしい。


由紀

「わーーー!美味しそう!」

「牡蠣の土手鍋!大好物!」

とにかく大はしゃぎ。

そして、やはり美味しかったようだ。

減っていた食欲もかなり、戻っている。


「最後はどうする?」

と聞いてくるので


由紀

「雑炊風にしたい」

と言うと


美智子

「卵を落とすかな」

で、

「牡蠣の土手鍋雑炊、卵とじ」になった。

由紀の体力回復には、効果抜群である。


由紀としては、本当にうれしかった。

とにかく「家族っていいなあ」と思った。

そして、その日も、ぐっすりと眠ったのである。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る