第272話VS芸能スカウト(12)
マスターは、橋本自治会長と大石産直市会長に、深く頭を下げた。
マスター
「本当に助かりました」
「ご協力には感謝してもしきれません」
橋本自治会長
「いや、これでスッキリした」
大石産直市会長
「やっと安心してコンサートが聴けるなあ」
そんな話をしていると、史の父の晃と美智子も店に入ってきた。
晃
「本当にご迷惑をおかけしました」
美智子
「史のために、ご不快な思いを」
二人とも、頭を深く下げる。
橋本自治会長
「いや、これは史君のためだけど、地域のためでもある」
大石産直市会長
「みんな、コンサートを楽しみにしているんだから」
と、ニコニコと笑って、握手をする。
それで晃と美智子も、ホッとした様子。
今度は校長と副校長、三輪担任と柔道部の佐野顧問も入ってきた。
校長が代表して頭を下げる。
「本当に地域の皆様やマスターにはお世話になって」
マスター
「いやいや、みんなの協力です」
橋本も大石も、笑っている。
晃が、また少し頭を下げて話だした・
「親父、ああ大旦那が、名前は言わないけれど、どやしつけたらしいんです」
「本庁の偉い人らしいんだけど」
「で、その本庁の偉い人から、あの警察署に連絡がはいった」
「あの警察署長は、すごく叱られたらしいんです」
橋本自治会長
「そう言えば、ガラッと態度が変わったなあ」
大石産直市会長
「もう、ペコペコ状態だった、こうも変わるものかと」
マスターはそこでニヤリ
「ああ、大旦那から、その話は聞いたよ」
「まず本庁のトップに、今回の芸能スカウト問題に対する地域警察の対応を、あちこちの講演会とかマスコミに話す」
「高校生一人とか、学園一つの問題ぐらいで警察は動かない?そんなことを言う警察署や警察官があるなんて、警察としてあるべき姿を忘れているってね」
「すぐにでも動かなければ、直に官邸に伝える」
「まあ、怒らせると怖いから・・・」
それをよく知っている晃も、少し笑う。
マスターは話を続けた。
「それから、例の芸能プロダクションについては、大旦那が理事長を勤めている都銀と関西の某芸能団体から圧力をかけた」
「都銀からは、反社会的行為をするスカウトがいるので、今後の融資についての懸念を伝えさせた」
「某芸能団体からは、タレントの貸出停止」
「こんなことを言われれば、全く手出しができなくなるね」
恐ろしい言葉が相次ぎ、橋本自治会長、大石産直市会長、校長と副校長は、少し震えている。
マスターは、またニヤリ
「ただ、大旦那は地域警察にひとつ、救いの条件をつけた」
全員がマスターを注目する。
そしてマスター
「地域警察が、地域住民と積極的に連携するならば、大事にしない」
その言葉で、店の中の雰囲気は、ようやく落ち着いたようだ。
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