第259話史の音大練習と新たな問題(1)
史は、カフェ・ルミエール楽団の冬の演奏会にで、バッハのピアノ協奏曲を弾く。
そのために、内田先生と相談し、音大のレッスン室にて、練習をすることになった。
史としては、音大での練習はためらったけれど、内田先生の自宅レッスンでは遠すぎるので、結果的に音大での練習になったのである。
史としては、
「こうなると定期的な感じになるなあ」
「少し面倒」
と思うけれど、一度話がまとまった以上は、約束を守るタイプ。
時間もきっちり守り、内田先生からレッスンを受けている。
ただ、定期的の音大で練習をすることになり、問題が発生してきている。
まずは、史の練習に注目する音大生が増えてきていること。
そして直接ではないけれど
「音大には来ないんでしょ?」
「それで内田先生からレッスン・・・それは優遇しすぎ」
「確かに才能はすごいけどさ、本来プロになる気がないのにね」
と、ほぼ「ヤッカミ」の声が、ヒソヒソと聞こえてくる。
史としては
「そんなことを言われても」だし、直接ではないから、あまり気にしてはいない。
内田先生からは
「音大生って、自己顕示欲が強いからさ」
「自分が一番上手とか、自分が一番内容の高いレッスンを受けて当たり前と思っている」
「でも、史君のレッスンは、私がしたいんだから気にしないでいい」
と、言われている。
事実、3回目の練習で、音大生たちからの「ヤッカミの声」は、全く聞かれなくなった。
おそらく、内田先生がピアノ科の学生に、その旨の話をしてくれたようだ。
しかし、それ以外の問題が発生してしまった。
史自身が、どうしてなのか理由が全くわからない。
それは内田先生も理由がわからなかった。
何しろ、史が練習を終えて、音大の校舎を出ると、毎日家まで誰かに「尾行」をされているのである。
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