第251話マスターと涼子、美智子
マスターと涼子、史と由紀が「シェフの挑戦料理」を食べ終わった頃、美智子が来た。
史
「母さん、どうしたの?」
由紀
「何か用事があるの?」
子どもたちはキョトンとしているけれど、マスターと涼子は、わかっていたようだ。
涼子がマスターに目配せをすると、マスターはキッチンに戻り、シェフの「挑戦の品」を皿に乗せて、美智子に渡す。
史
「そんなんで、わざわざ?」
由紀
「あきれる・・・」
と、子どもたちは、そんな感じだけれど、大人たちは、また違う。
美智子
「うーん・・・美味しいんだけど・・・」
「どうかなあ・・・」
マスター
「な、そうだろ?」
涼子
「私もねえ・・・そう思ってきた」
「伝統がねえ・・・」
「悪くはないけれど」
首をかしげ始める。
史と由紀は、その話には入っていけない。
史
「店に行こうよ、洋子さんたちにも持っていくものがある」
由紀
「そうだよね、そうしよう」
こういう時は、案外仲良し、話はすぐにまとまり、マスターと涼子に頭を下げ、家を出た。
史
「母さんに追っかけられるとは知らなかった」
由紀
「と言うよりは、マスターとか涼子さんと昔話をしたかったのかな」
「味見にかこつけてさ」
史
「そうなると、子供はお邪魔虫だ」
由紀
「わからない話を聞き続けるのも、面白くない」
そんな話を二人でしながら、カフェ・ルミエールへの道を二人で歩く。
由紀
「で、今日はどうだったの?」
史
「楽しかったけど」
由紀
「けどって何?」
史
「シェフが新作メニューの味見に、またおいでって」
由紀
「そうかあ・・・マスターとは味の系統が違うからなあ」
史
「マスターは伝統重視でね、それがいい」
由紀
「シェフは、伝統を重んじながら、何か新しいものを考えている」
いろいろ話していると、カフェ・ルミエールが見えてきた。
史
「母さんが来る前に帰ろう」
由紀
「うん、面倒」
となって、ここでも意気投合している。
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