第237話史の回復

史の両手首は、ほぼ一週間で腫れがなくなった。

「事件直後」は、落ち込み気味だった史の顔に笑顔が少し戻ってきたことから、周囲もホッとしている。


懲戒解雇のうえ、警察に逮捕された新聞部の稲葉前顧問の後任として、「行きがかり上」、史のクラス担任である三輪が顧問となった。

三輪は、まず前顧問の不始末や不品行を、新聞部全員に謝った後、相談をかけた。


三輪

「少しね、史君の負担を軽減したいの」

「みんなも承知の通り、カフェ・ルミエールの楽団の演奏会もあることだし」

三輪が、そんな相談をかけると、新聞部全員が頷く。


部長の坂本は

「そうですね、今後は僕達が史君をサポートしないといけない」

「ずっとサポートされてばかりで、史君に甘えていたようで」

「先生だけじゃなくて、僕達のほうが情けない」

坂本が史に頭を下げると、他の部員も同じように史に頭を下げる。

史は、顔を赤らめて恥ずかしそうな顔になる。

それでも、少し痩せてしまっているし、顔も白い。


新聞部の二年生の真紀が史に声をかける。

真紀

「史君の取材も他の部員と同じくらいにしたいの」

「多少、各部から文句を言われるけれど」


坂本

「何しろ、人気者だから」

少し笑っている。


史は、まだ恥ずかしそうな顔をして

「はい、ありがたいです」

「確かに学内とか地域の人から期待されているので、音楽も手は抜けません」

「でも、僕も文を書くのが好きなので・・・」


三輪顧問も、頷く。

「史君、取材ということではなくて、あまり出歩かないような記事を書いたらどうかな、そのほうが時間の節約になる」

そんな提案をする。


坂本は

「史君なりの、何かコラムのようなものが読みたいなと」

「取材は顧問の提案を後押しする。

その三輪顧問と坂本部長の提案を全員が賛成しているようだ。

史の顔を全員で見る。


「うーん・・・そうなると、何か連載ものかなあ」

「少し考えてみます」

「料理はマスターとか洋子さんとかに聞いて」

「古典は家に本が並んでいるし」

ここで、史の顔にようやく、明るい雰囲気が戻っている。



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