第185話史が京都に?(5)

洋子はその顔をきゅっと引き締めた。

そして史に話しかける。

「史君」

声も少し低くした。

史も

「はい」と素直な顔になる。

少なくとも、ムクレ顔ではない。


洋子

「あのね、史君の希望はわかる、私もフランスで修行したから」

「確かに海外に出ないと、わからないことも多い」

「海外に出て知ること、海外から日本について考えることも、史君にとってすごく重要だと思う」

洋子は、一呼吸置いた。

「それでね、史君が一人旅で気兼ねなくという気持もわかる」

「ただね、その資金にしろ、そういうことを言うのなら、人に頼ってはいけないの」

「わかる?この意味」

「世知辛いとか、細かいとかの話じゃないよ」

「たとえば進学費用として、ご両親に出してもらうにも、ご両親の納得がないとだめだよ」

「その話はご両親にはしたの?」

洋子は、史の目を真っ直ぐに見つめる。


史は

「あ・・・父には少し・・・」

そこまでは話した。

ということは、母美智子には話していないようだ。


由紀の顔がムッとしている。

加奈子は腕を組んで難しい顔。


洋子は少し表情を柔らかくする。

「それで、その海外留学はいつにしたいの?」

「今すぐ?それとも?」


史はちょっとホッとした顔

「えっと、すぐじゃなくていいんです」

「まだ僕は高一ですし」


洋子は

「それじゃあ、人の顔を立てる意味もあるし」


史も洋子の意図がわかったようだ。

「大旦那とか加奈子ちゃんのお誘いもあるから」

史は加奈子の顔を見た。


「加奈子ちゃん、いきなり変なことを言ってごめんなさい」

「一度、一週間くらいの旅行みたいな感じで、加奈子ちゃんと京都歩きたい」

「だから、道案内お願いします」


加奈子の表情が柔らかくなった。

「私もごめんなさい、急に京都に住むような話をしてしまって」

「史君だって、史君の気持ちを無視されて、つい突っ張ったんだね、よくわかる」

「ごめんねえ・・・」

加奈子は泣き出してしまった。


洋子は、なんとかホッとした顔。

奈津美、結衣、彩も「さすが洋子さん、大人だ」で、胸をなでおろしている。


由紀だけは

「何?また私をナイガシロ?・・・許せん・・・・」

「私も京都行きたいなあ・・・史は嫌がるかなあ」

そんな感じ。

最初はムッとしていたけれど、史と一緒に京都に行きたいらしい。

少し涙顔に変化している。

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