第162話カフェ・ルミエール楽団演奏会(8)
さて、演奏会一週間前に少々不安は発生したけれど、その後は特に何もなく練習も無事に進んだ。
そして、今日は演奏会の当日である。
史は、ソリストなので、一応スーツ姿になるようだ。
自分の部屋で試着をしていると、姉の由紀と母の美智子が入ってきた。
「プ!まるで七五三!キャハハ!」由紀
「ほんとだねえ、千歳飴持ったほうが似合うかも」美智子
「もう!うるさいって!二人とも!」
「どうして勝手に入ってくるの!」
史は怒るけれど、今さらどうにもならない。
由紀
「ほら、グズグズしない!お迎えの車が来ている、里奈ちゃんはもう乗っているから!」
美智子
「わかる?史はアホで危なっかしいから洋子さんが車で迎えに来てくれたの」
・・・本番前のソリストに「グズ」だとか「アホ」というのも、史の家族らしいけれど、史はけっこうムクレている。
それでも、車に乗り込み、里奈の顔を見るとニッコリする。
史
「里奈ちゃん、ありがとう!うれしい」
里奈
「ちょっとネクタイ曲がってる、直すよ」
・・・まったく・・・仲良しですので、省略。
これには、一緒に車に乗った由紀、美智子、運転手の洋子も「何も言えません」状態である。
そんな史たちがカフェ・ルミエールのビルに到着し、地下ホールに入ると、既に楽団員や先生方、音大の生徒たちが、集まってきている。
「さて、本番だね」
洋子は史の肩をポンと叩いた。
「はい、洋子さんは聴いてもらえます?」
史は洋子の顔を見る。
「うん、コンサート時間中はお店を閉めます」
「だから、たっぷり聴かせてもらうね」
洋子の言葉で、史はニッコリと笑う。
洋子と史がそんな話をしていると、マスターが入ってきた。
マスターは史に声をかけた。
「さあ、思いっきりね」
史もまたニッコリと返す。
「はい、目一杯で」
マスターは、もう一言あるようだ。
そして美智子と由紀にも目配せ。
「大旦那と奥様もいらしている」
確かに、ホールの扉を開けて、大旦那と奥様が入ってきた。
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