第149話女子水泳部取材と史のエロス(2)
さて、史は約束通り、女子水泳部の取材に出向いた。
「新聞部の史です、今日は取材にまいりました」
「それでは、よろしくお願いします」
まあ、どこでも同じだけど、史はキチンと頭を下げる。
史の定番の仕草なので、冷静そのものである。
・・・が・・・
ものすごい歓声である。
「キャーーー!史くーん!」
「かっわいい!」
「ねえ、早くこっちに来て!」
「ようやくだねえ!」
「ねえ、ほら、早くう!」
十数人の水着姿の女性部員が、まさに史をガン見、大騒ぎである。
「えっと・・・コホン」
やはり、史も男の子である。
ちょっと焦る。
しかし、史は取材でも音楽でも、ほとんどカタブツである。
少し目を閉じ、「ふぅーーーーっ」と一息。
ゆっくりと声を出す。
「えっと、キャプテンと取材の順序の再確認をしたいのですが」
「キャプテンの真衣さん、よろしくお願いします」
まあ、これも「定番」の取材順序である。
「えへへ・・・」
史のお願いで、キャプテンの真衣が少し前に出た。
当然、水着姿であるけれど、少しグラマー系。
それに、真衣も、まあ、ニンマリとである。
ただ、すぐには話が、ここでも進まない。
「えーーーー?」
「ずーーっと待ったのに!」
「キャプテンだけじゃズルいって!」
「待ちきれない!」
キャプテンの統率力も何もない。
史は、結局、立ち往生になる。
「しょうがないなあ・・・でも、すぐ終わるからさ」
真衣は、そう言いながら、部員の反応など気にしない。
水着姿のまま、史にピッタリである。
「あの・・・近すぎ」
史はそう思うけれど、真衣はますます、ピッタリ。
「うん、いいかな、この前の打ち合わせ通りで」
「まずは、水泳部の練習の様子を見て、全体的なインタビューと」
「後は私から始まって個々のインタヴューで」
・・・「何も全部」確認することもないと思うけれど、真衣としては史にピタッとしたくて仕方がないらしい。
「じゃあ、そういうことで」
史は、チョコンと頭を下げ、真衣からは「もう、素早く」さっと離れ、プール壁前の椅子に、ダッシュである。
「はぁーーーー」
とため息をつく史に、もう一声かかった。
「史くーん!」
「取材が全部終わったら、一緒に泳ごうね!」
「わーーー泳ぐ泳ぐ!」
また、もの凄い大騒ぎである。
「え?水着無いよ」
ウロタエる史に、また声がかかる。
「ああ、水着は、もう買ったよ、私たちが」
「今日のお礼でね!」
「合唱部だって参加したんでしょ?」
「エコヒイキはいけないって!」
さらに追い打ちの大騒ぎである。
「はぁ・・・泳ぐと疲れるんだよねえ」
「家に帰って勉強もあるんだって・・・」
「お饅頭二個は食べないとなあ、お肉のほうがいいかなあ」
史はボーゼン、頭の中は大混乱である。
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