第117話同窓会(2)

「私は同窓というわけではありませんが」

晃は、そもそも源氏研究者、横浜のホテルや料理学校の同窓ではない。

しかし、美智子やマスター、涼子、洋子、六本木の斎藤パティシェ、ひとみは首を横に振る。


「そんなこと言ってもさ、一緒に遊んだ仲間だよ」マスター

「そうですって、毎日毎日美智子さんの所に来てね」涼子

「俺も妬けたなあ、美智子さんが晃君の前に立つと真っ赤になってさ」斎藤

「私も聞きました、それを邪魔しようとして、マスターとか斎藤先生が美智子さんに他の仕事を指示するけれど、晃さんはずっと待っていて」洋子

「それで、みんな諦めて、次に晃さんと美智子さんを結婚させる段取り」ひとみ

「大旦那も最初は反対していたけれど、とうとう折れて」マスター

「最近、店に来られたけど、いい夫婦ってほめているしね」斎藤

「ああ・・・私も妬ける・・・」洋子

「その上、由紀ちゃんと史君みたいな可愛いお子様まで」ひとみ


そんな会話が弾む中、様々な料理が出る。

「仔羊ローストの燻製、ロックフォールの香り付け」

「牛フィレ肉のグリル マディラワインソース」

「フォワグラコンフィ 野菜の冷製バリグール」

「ポルチーニ茸のパイ包み焼き」

「あかざ海老のオーブン焼き レモン添え」

「舌平目の地中海風」

・・・・・・

なんとも、美味しい料理の連続となる。


「うん、さすがマスターだ」斎藤

「伝統そのものにしたよ」マスター

「この料理も楽しみでね」晃

「そう、晃さんの美味しそうに食べる顔が好きで」美智子

「ああ・・・・今でも熱いなあ・・・妬ける」涼子

「でもさ、その子供たちがケンカばかりで」洋子

「へえ・・・なんで?」ひとみ


少し考えていたマスターが口を開く。

「ああ、結局ね、由紀ちゃんは史君が心配でしょうがないのさ」

「史君は、いろいろだから」


美智子は首をひねる。

「あの史がねえ・・・人気があるっていうけどさ、さっぱりわからない」


「それはともかく・・・大旦那が店に行ったの?」

マスターは斎藤に尋ねた。


「うん、大旦那が、ビルのオーナーに話をしたらしい」

「それでさ・・・」

斎藤の声が低くなり、真顔になる。

「ビルのオーナーとの話が終わってからね、店に来られて」

「何でも、あのビルを大旦那が買ったんだとさ」


「ほう・・・」

マスターの目が大きく開いた。


「それでね、俺の店の部分が俺の区分所有にしろだとさ・・・」

「しかも・・・」

斎藤は、ハンカチで顔を抑えている。


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