第85話里奈の不安(1)
里奈は、本当に不安である。
その原因は、カフェ・ルミエール楽団のコンサートが決まって以来、史の表情がガラッと変わって明るくなったことにある、
「うーーー沈んでいる時の史君でよかった」
「明るくなって、あちこちから声がかけられているし」
「私って、通学仲間だけ?」
「いつか、もっと可愛い女の子に取られちゃうのかな」
「そうだよね、私なんか汗臭い柔道部だもの・・・」
日増しに明るくなる史の表情と反比例するかのように、里奈の表情は複雑になる。
そんな里奈の表情を、柔道部先輩の美佳はすぐに見抜く。
「だから、史君は難しいって言ったでしょ!」
「あの子は、自分では気づいていないけれど、人の関心を集めちゃうの」
「明るいにつけ、暗いにつけね」
「暗いと遠巻きに心配するけれど、明るくなると手がつけられないほどに人が寄ってくるよ」
そんなことを言うものだから、里奈はますます不安になる。
「一人占めは難しいのかなあ」
「史君は私と一緒で楽しいって言ってくれたのに」
「あーーーもう!どうしたらいいの?」
そんなアセリ顔の里奈に美佳はまた余分な口撃
「ああ、私なら強引にゲットするなあ」
「里奈なんかに負けはしないさ」
「里奈がウジウジしていたら、つけ込むスキが増えたってことだしさ」
「とにかく狙う女が多いってこと」
さて、ますます不安になる里奈の耳に「更なるリスク情報」が飛び込んできた。
クラス女子からの情報である。
「ねえ、史君、次は水泳部の取材だって」
「水泳部のさ、あのグラマー良香さんが、ニンマリとしていたもの」
「・・・ヤバイなんてもんじゃないって!」
里奈は、またしても不眠症に陥ってしまう。
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