第80話カフェ・ルミエール楽団コンサート(2)
マスターはずっと腕を組み考えている。
「あの親子のことだしさ、他人が口を出すのもなあ」
「由紀ちゃんも、史君には、けっこうキツイしな」
涼子も、頭を抱えた。
「あの美智子さんって、けっこう一途でね」
「史君が心配となると、そうなっちゃうかなあ」
「まあ、心配になるようなことを連発する史君だけどさ・・・」
マスターも、いろいろ思い出している。
「史君は、子供の頃から病気ばかりでさ」
「風邪は長引く、お腹はすぐにこわす」
「何度も入院するしさ、俺も美智子さんと一緒のホテルだったから、心配でしょうがなかった」
涼子も続いた。
「勉強も出来るし、運動も上手、だけど体力がないのかなあ」
「ピアノで都大会一位になって、やっと全国大会の時はインフルエンザ」
「柔道部との一件もあるけれど」
榊原もいろいろ考えている。
「確かに、史君の音楽性は繊細な感じでさ、そういう体力のこともあるのかな」
「でもね、他の人には出せないような、音楽のきらめきがある」
「普通に弾いているとは思うんだけど、その普通の中にでも歌心があるんだ」
「本当にマジになったら、ものすごい演奏家になる」
「その機会を与えたいのさ、聴いても見たくてさ」
マスターは、榊原の言葉に、一つ一つ頷いた。
そして、唇を水割りで、少し湿らせ
「こうなると・・・説得できるのは」
涼子もすぐにわかったようだ。
しかし、難しい顔である。
「・・・いや・・・恐れ多すぎです・・・」
マスターは、一旦、目を閉じた、
「まあ、しょうがない・・・」
意を決してしまったようだ。
誰かに電話をしている。
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