第24話史のピアノレッスン(2)

結局、引き止めることは出来ず、史は帰ってしまった。

春奈には、後悔ばかりが残る。


「つい、怒っちゃった」

「ずっと来てくれなかった腹いせもあるんだけど」

「落ち込まれると、つらいなあ」

「あのコンクールの時だって、私もあの音楽講師に立ち向かったけれど」

「結局史君は、へこんでしまった」

「私って、弟子を守れないダメな先生かなあ」

そう思うと、涙も出てきた。


「私のこと、思い出してくれて来てくれたのに」

「冷たい態度で門前払いして」

「史君のピアノ聞きたいなあ」

「連弾もしたいな、昔やった時、可愛かったもの」

「うー・・・・どうしよう・・・」

「史君に会いたいよ・・・」

そう思うと、春奈はどうしても史と話をしたくなった。



本当に恐る恐るライン電話。

「史君、怒ってごめんね」

「先生寂しかったの」

「また、来てね、お願い」

とうとう「お願い」になってしまった。


史は

「僕の方こそ、ごめんなさい」

「先生のこと大好きなので、ショックで帰ってしまいました」

「レッスンよろしくお願いします」

史も少し涙声。



春奈は、やっと胸をなでおろした。

そしてうれしかった。

「私のこと、好きって言ってくれた」

「しかも大好きって・・・私、35歳だよ・・・どうしよう・・・」

「デートしたくなった・・・うーん・・・」

「親子で見られるかなあ・・・」

「史君、食べ物は何が好きだっけ・・・」

春奈は、うれしさのあまり、史とのデートをしたくなっている。


少しトラブった史のピアノレッスンも、一旦の決着がついたようである。


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