第8話 嫌われたのかもしれないです。
背中を優しくポンポンすることで、無事眠りについてくれたはるかちゃんは翌朝早くに、お迎えが来てお別れとなった。
「またね、はるかちゃん」
控えめに振ってくれるふっさりした尾もまた可愛らしい。お辞儀をし、見送る背を軽くたたかれ振り向くと、夜勤明けとは思えないほど爽やかな笑顔の藤宮さんだった。
「守野君、お疲れ様。急にお願いしてごめんね、とっても助かりました。今日はもう帰って大丈夫よ。また明日よろしくお願いします」
そう言って立ち去ろうとする藤宮さんの背に声をかける。
「あの、明日俺の担当は何、と言うか誰、と言うかどなた様ですか」
「お、事前の情報把握と準備、いいね、ひとつ大きな進歩だね守野くん」
少しいたずっらぽさが含まれる瞳にドギマギする。俺の耳、まさか赤くなってねーだろーな。
「明日は、ラブラドールレトリバーの浅野ジョン君、3歳の男の子よ。いつも来てくださるんだけど、今回はちょっと、滞在期間が長くなるかもしれないの」
最後の方、心なしかトーンが低くなったような気がした。
「それじゃ、お疲れ様」
踵を返した藤宮さんの背中に見とれていると、ふいにイヤホンのスイッチが入る。
「守野、トランシーバーの返却忘れないでよ」
波多野かよセンターでもライトでもないショートの波多野、いい感じだったとこぶち壊しやがって、っていい感じになってたの俺だけだけど。
「了解、今返しにいくよ。波多野もお疲れ」
あたり前に「お疲れ」が返ってくると思っていたらぷつり切られた。
無視かよシカトかよガン無視かよ……。
こういうの結構凹む。いや、もしかして聞こえなかっただけじゃ、そんな訳ねーよな一呼吸おいて切られたし。
頼りなさげな上ムカつかれてるし、昨日のアホさ加減で嫌われたらしい。
はあ。
ここで何とかしなければってやる気みたいなの、どこからか降ってこい!
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