第6章 学園生活の始まり⑦
「では次に炎条君、お願いできるかな?」
「あ、あぁ……」
私に弄ばれてたじろいでいた彼は、はりまる先生にただ呼ばれただけでも少し照れていた。
いつも近くにいる狩根さんは、ここまで童貞っぽい炎条君とどう付き合ってるのかしら。
それとも炎条君の方が、狩根さんを異性として見てないのか。
それはそれでムカッとはするけど、岩島君も含めてねじれてるわねえこの三角関係。
そんなことを考えているうちに炎条君は私の斜め前に、はりまる先生側からも顔が見えるように立った。
先生のバインダーを持つ手にも緊張が走っている。
「じゃあ【変身】使ってくれるかしら。まずは途中の様子とか見たいから」
「わっ、分かりました……いや、分かったぜ……」
あまりに照れたせいで思わず敬語が口をついて出てしまった様子。
しかしそこは彼のプライドか、すぐに言い直すと表情が変わり、一気に集中モードに入る。
「我が肉体に眠りし焔の神よ、汝今再び我が元に舞い降りて、その業火をもって眼前の仇を焼き滅ぼさん!」
試験の時と同じ、中二臭い詠唱をした後に、あの時とは違うフレーズとポーズで叫んだ。
「”
前は顔に手を当てて唱えた後合掌して発火していたのに対し、今回は顔に当てず唱えて、その後刮目してガッツポーズを行いつつ叫んでいた。
叫ぶと同時に一瞬、彼の身体が緑色の光に包まれたかと思うと、すぐに全身から炎が上がり変身が完了していた。
その様子を見るや否や、はりまる先生はバインダーに挟んでいる紙にすらすらとボールペンを滑らせる。
三十秒ほどかけてひとしきりに何か書いた後、ペン先を収納して炎条君に話しかけた。
「じゃあ炎条君。まずはその全身発火をやめて、部分的に火を灯すことってできたりする? 腕だけとか脚だけとか」
「無理っす。中学の頃にこの力が目覚めてから人目に付かないところで何度か試したんすけど、そこら辺の力のセーブがむずくて。炎の弾飛ばしたり火を吹いたりは出来んだが、身体のパーツのどっかだけから火ぃ出すってのだけが出来ないんすわ」
「あら、そうなの? てっきりできるものかと思ってたわ」
「まあこれからは人目も気にせずできるっぽいんで練習しますわ、一生懸命。とりまそんなとこっすね」
炎条君にあっさり言われ、次の言葉に悩むはりまる先生。
確かに私からしても、全身から火を出してるだけというのは文字通り燃費が悪そうではある。
新調した制服を着ているおかげで、彼もまた自分の服が全焼するようなことは起こっていないけど、それでも限度はあると思うから部分的に発火できた方がそういう意味でもできたらいいな。
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