第3話 高級 こうきゅう


「……」


 その中には、これまた仰々ぎょうぎょうしい『高級の布』に包まれた『品モノ』が収まっていた。


「うわ、この布も『きぬ』かよ」


 どう考えても、この包まれている『品モノ』には合っている様には思えない。一応、真理亜まりあさんから聞いていたので、中身は知っている。


「……」


 しかし、外見があまりにも『仰々し過ぎる』ので、やはりモノを知っていても、かなり勝手ではあるがそれなりの品物が入っている様に思ってしまう。


「いや、本当に勝手だけどな」


 そんな期待を抱きながら俺は、包まれている絹の布をゆっくりとめくった……。


◆  ◆  ◆  ◆  ◆


「思ったよりも……普通だな」


 あそこまで綺麗な『漆塗り』の箱に入り、さらに丁寧に『絹の布』で包まれていたモノとは思えないほど、ごくごく普通の『はさみ』が収まっている……。


 一応、真理亜まりあさんから『はさみ』だとは聞いていた。


 でも俺はてっきり、『純金』とか高級なモノで出来ているとだと思っていたんだけど……。


 これは俺が勝手に思い込んでいただけだったのだが、そんな事に関わらず違うと分かった時、やはり少しガッカリしてしまう。


 まぁ、鋏である事には違わないんだし、普通に使えるるだろう……。


 俺は、おもむろにその『はさみ』を掴んで持った瞬間――――


「重っ……」


 その見た目とは全く違う予想外の重さに驚き、思わず目を見開き、二度見をしてしまった程である。


「えっ!?」


 しかも、こんな普段言わないほどの大声で言ってしまった。


 だが、この『はさみ』は確かに、真理亜まりあさんから聞いていた通り、『普通』の『はさみ』ではない。


 いや、確かに『ちばさみ』って聞いていたけど!


 大きさは普通の大きさと比べると、確かに大きい。だが布を切る『ちばさみ』と聞けば、この大きさも納得だ。


 ただこの重さは……規格外きかくがいである。


 いや、もしかするとこの『銀色』は塗装とそうで、実は『金』で出来ているから、こんなに重いのかも知れない……なんて思ってしまっていた。


 でも確か、真理亜まりあさん。こんな事も言っていたはずだ。


 そう、実はこの『はさみ』。本当は真理亜まりあさんの家に代々だいだい伝わる由緒ゆいしょあるモノになる『はず』だったらしい。


『……はずだった? なんでそんなに曖昧なんですか』

『実はね『亞里亞ありあさん』が出家する際……どうしてもこの『はさみ』だけは渡せないって、言われたらしいのよ』


 ただ、亞里亞さんがその理由を他の人に……いや、親しい人にすらそれを教える事なく、その『はさみ』を持っていなくなってしまった……という事らしい。


 ただここはやはり「なんでそんなモノがここにあるのだろう」の一言に尽きるだろう。


「……」


 俺にはこの『疑問』の答えがなんとなく分かっているが、合っているという確証は……ない。


 そして、この答えをより確かなモノにするには、やはり『あの人』と会話をし、それに関する言葉が必要だ……。


「…………」


 今の『あの人』は、体調不良で寝込むことが多い。そんな人に自分勝手に話をしに行くのも悪い気がしてしまう。


「あっ……」


 どうすべきだろう……と、あごに手を当てながら考え込んでいる時。


「…………」


 なぜかこんな朝早い時間にこの『物置部屋ものおきべや』に現れるはずのない……少女が現れた――。

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