第2話 豪華 ごうか


「さすがに今日は……いねぇな」


 だが、今までの行動を考えると、こんな時間にこの『物置部屋ものおきべや』にいてもおかしくない。


 思い返してみると以前。あれは確か『葛風呂敷くずふろしき』を女の子に渡した時の事だ。


 その時。最初は俺が話していたが、最終的には『あの人』が現れた……という事があった。


 あの時は、特に何事もなかったが、今は状況が違う。


 あの人も何かしら『理由』がなければ、こんなところに来るはずがない。それくらいこの場所に来る……という事には『理由』が必要な気がする。


 そもそもここに来る理由は、『品モノの補充ほじゅう』って事以外に理由があるのかだろうか……と思う。


 考えてみるとこんな『物置部屋ものおきべや』に来る理由なんてその程度のはずだ。


 ここ最近、思い返してみても十回ぐらいはここ最近はこの場所でその姿を見ている。


「……ん? そういえば」


 実は昨日、真理亜まりあさんと話をしていて『話題』になった『品モノ』があった。だが、俺はその『品モノ』を見た事がない。


 大概たいがいは、あの人から直す様に頼まれたモノしか見た事も触った事もない。だから、俺も真理亜まりあさんの言っていたその『品モノ』を見た事も聞いた事もなかった。


 でも、真理亜まりあさんの言っていた事と会話の内容を考えると……あの人は『亞里亞ありあさん』だと思うと、やはりここになければおかしい。


「……あった」


 以前にも物色はしていたが、その時と比べると、やはり品物の位置も大分だいぶ変わっていた。


「いや、そもそも俺。そんなにここに来ねぇし」


 そう、俺は大体自分の部屋で修理や修繕をしている『インドア人間』だ。つまり、自分の部屋からほぼほぼ出ない。


「つーか、なんだ? コレ?」


 一応コレが何か……とは聞いている。


 そして、コレがかなり『仰々ぎょうぎょうしい箱』に入っている……という事も真理亜まりあさんから聞いていた。


「いや、聞いてはいたけどよ」


 まさか、こんなみやびな箱に入っているとは……。


 その箱は、ふちに金色の装飾そうしょくが施されており、全体には桜と川の絵が描かれている。


「しかもコレ。漆塗りじゃねぇか?」


 手に伝わる感触は、完全に『漆塗り』だ。どう考えても、ただの箱にほどこすような装飾そうしょくじゃない。


 つまり、真理亜まりあさんの言う通り。


 この仰々しさと豪華さを考えるとやはりコレは『品モノ』は、普通の商品ではない……という事になるのだろう。


「そんで、コレの中身は確か真理亜まりあさんの話だと……」


 あまりの『箱の豪華さ』に驚きながらも、俺はその箱の中身を確認するために、ゆっくりと……箱のふたを上へと動かした――。

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