第8話 不明 ふめい
「……なぁ、
「いえ、見ていませんが……」
あのはた迷惑な二人が帰った後、俺はいつもの倉庫に一人で本を読んでいた。
それにしても、父さんがここに来るなんて……珍しい。
だが突然扉を叩いた父さんから、そんな言葉を言われると、少し不安になる。なぜなら、『
確かに、兄さんはさっきここを訪れたが、この倉庫に来たのは一時間以上も前の話である。
だから、「見た」と言うにはあまりにも……時間が経ち過ぎていると感じた俺は、父さんに「見ていない」と答えた。
「そうか……」
父さんは、いつもの
いつも父さんは、あまり物事を人に
それはつまり、俺に
「…………」
つまり、兄さんこの倉庫を最後に訪れ、そのまま行方を
そんな状況を放っておくことが出来そうにもない。
「……どこに行ったんだろう?」
でも、俺の出来る事なんて外に出て、何も分からない状態で、訳も分からずモヤモヤした気持ちのまま、とりあえず家の周りをウロウロする事しか出来ない。
すると――。
「おーい、どうした? 家の周りをさっきから」
「あっ、『
俺に声をかけてきたのは、隣のおじさん『源内さん』だった。
この『源内さん《げんない》』は、俺がこの家に拾われる以前から……というか、両親が結婚してここに住む前からずっーと畑を耕して生活をしていた『農家』だ。
ただ何というか、この源内さんは昔から顔が怖い。
ここら辺の子供は、大抵幼少期の頃はこの『
最悪の場合は、母親に抱きついて泣き出すしてしまうほどだ。
しかし、なぜか俺の場合は逃げ出すという事もせず……かと言って泣き出すということもせず、むしろ笑っていたらしい。
あの頃の俺は、『
今となっては、そう思ってしまう。そして、今では子供たちが泣いて逃げ出したくなる気持ちも……何となく理解出来る。
「実は兄さんが、どこか行ってしまいまして」
「どこか……ってどこにだ」
「いや、それが分からなくて……誰にも言わず行ってしまったらしく……」
「ふーん……。あの隠し事なんてしていても表情ですぐにバレるっていう
『源内さん《げんない》』は腕を組みながら、俺の話を真剣に聞いてくれた。
だが、この人が「あの
「はい。いったいどこに行ってしまったのかと……」
「……ん? ちょっと待てよ? 」
「? どうかされましたか?」
「あれ? そういや確か、さっきそこの道を歩いていた様な?」
「えっ?」
『
だが、『
「えっ、ここを……ですか?」
「ああ。俺もなんでこんなもうすぐ日も落ちる時間に? と思ったんだけどな。でも、あの時の
「……そうですか」
つまり『
それに、残念ながら今は『
そこで、俺はこの目の前にある急な
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます