第6話 疲労 ひろう
結局、色々思い出そうとしても分からない。
「ッ!」
もう一度思い出そうとした。
しかし、いつもなぜか突如頭になぞの物体が当たったかのように『頭痛』が起きる。
確かに意識を失っているにも関わらず、その時期の事を思い出すのは難しい。
「はぁ」
ただ、どんなに思い出そうにも、思い出せない事はある。そんな時は大概……。
「……寝よう」
寝てしまった方が気持ち的に楽である。俺はどこか諦めた様に、小さくため息を一つだけついて『行灯』を点けた。
この『行灯』は……少女曰く『ソメイ』と呼ぶらしい。
そして、かなり古いモノらしく照明器具ではあるこの『ソメイ』を使う時は、中にいつも小さなロウソクを使っている。
ただ、この『行灯』の正式名称は『
一応、古書店を営んでいる身として、古書の中で何度かその名前を見た事はあったが、普通の『
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しかし、側面の板には、通常『桜』ではなく『三日月』や『満月』に切り抜かれているらしい。
でも、なぜこの『ソメイ』が『桜』を側面の板に使っているのかは分からない。
ただ『ソメイ』を作った人が『桜』が好きなだけなのかも知れないだけかも知れないが、ただなぜかいつもコレを使うといつもたとえ眠くなくても、すぐに睡魔が俺を誘い、目が覚めたころには、空に月ではなく、眩しい太陽が昇って俺を起こしている……。
――なんて状況は結構あった。
しかし、寝るのが早くても、決して「疲れが取れる」なんて事はなく、むしろ寝る度に疲れは『溜まる一方』だ。
その最終的な結果が、『骨董店』で倒れるなんて醜態に繋がったわけで……。
じゃあ、その『ソメイ』という『行灯』を捨ててしまえばいいのだろう。そう言う人もいるかも知れないが、俺としてはそういう訳にもいかない。
もちろん、俺が持ち主ということもある。だが、それ以上に気になることがある。
だって、あの『夢』の中に現れる女性は……思い返してみると、あの女性は俺にきっと何かを伝えたい……という意味で現れている様には思えない。
いや、「伝えたい」といえば伝えたいのだろう。しかし、その伝えたい事は決して良い方ではない……そう思う。
なぜなら、あの人はいつも……なぜかそんな顔を曇らせ、今にも泣きそうな顔で、俺を見つめて何も言わずにただ立っていたのだから……。
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