かつての王国

かつて栄えた王国に

かつて王女だった娘がいた


銀色の髪と赤い唇

歌う声は鐘のごとく鳴り

運命に抗うように風を揺らす


かつて永久と呼ばれた王国に

かつて騎士と呼ばれた男がいた


漆黒の髪と薄い唇

誓いの声は雷鳴のごとく響き

運命と戦うように嵐を起こす


娘は男に言う

わたしがこの国を守りましょう

わたしがあなたを守りましょう


男は娘に言う

わたしはこの身を捧げましょう

わたしはあなたの心臓となりましょう


娘は赤い唇を噛み

男の肩へと手を伸ばす

かつて頬を預けた肩へ

かつて心を乗せた肩へ


いまは滅びゆく王国に

いまは名のない娘と男がいた


誇りと誓いと想いを交わし

ともに滅びゆく娘と男がいた

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