残酷を知る人
「針が怖いかい?」
一本の針を手にして彼は笑う
「本当に怖いものを君は知らない」
私の知っている笑顔で彼は笑う
「僕となら、知ることができる」
細く美しい指で彼は
持っている針を床に落とす
「本当に残酷なことを君は知らない」
私の知っているまなざしで彼は頬笑み
私の知らないことを語りはじめる
「針よりも綺麗で怖いもののことを」
私は言葉を返せないまま
彼の姿に見とれていた
「僕と行くのなら、知ることができる」
彼の足元で光る針を拾えないまま
私は彼の声に聞き入っていた
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